Isabelle Olivier は1990年代に活動を始めたフランス (France) の harp 奏者だ。 Sébastien Texier (Henri Texier の息子) らとのグループ Océan など主に jazz/improv の文脈で活動している。 最新作は4人のミュージシャンとの duo を集めたものだ。 harp という楽器のせいか folk/roots もしくは classical な雰囲気も感じる jazz/improv が楽しめる作品だ。
Venitucci の accordion との duo による “Tokyo Bossa” や “Tango” などその曲調も親しみ易いけれども、 free 色濃い展開の方が楽しめた。 ヨーロッパで活動する韓国系の歌手 Youn Sun Nah (Act からリリースがある) との duo も 普通に歌う “My Foolish Heart” より 自由にスキャットする “Wae”。 最も耳を捉えたのは Sclavis との duo。 重い bass clarinet の響きと harp の音色とのコントラストも良く、抽象度高い展開もかっこいい。 Erskin も、もっとリズムを刻むかと思いきや、音を散らすような展開が良かった。
ラストの &ldquo#1” は 12曲目までの音源を Olivier Sens が remix したもの。 といっても、ダンスフロア指向のものではなく、 electronics 処理を加えた 5tet での演奏のように、巧くまとめている。 むしろ、この編成でアルバムを聴いてみたくなった。
合わせて前2作を簡単に紹介。
My Foolish Harp の “#1” で remix を手がけることになった Olivier Sens との duo だ。 “Donna Lee” のようなスタンダード曲も演奏しているが jazz のイデオムは強くない。 メロディを弾くというより、プリペアドも駆使した harp の響きの断片を散りばめていくような曲も半分ほどある。 Sens の処理もループでリズムを刻むようなものではなく、harp の響きを控えめに変形させるようなもの。 サワリを効かせて thumb piano のように演奏する “Travel Vibes” なども耳を捉える。 Sens による electronica な音処理と Olivier の harp の音が絡み合う、 繊細な音空間が楽しめる作品だ。
Johan Renard、Sébastien Texier らとのレギュラーの 5tet Océan によるアルバムだ。 saxophone をフィーチャーしドライブ感を感じるような展開もあり、 post-free/ECM 的なものではあるが jazz のイデオムが強く感じられる。 5tet のもの以外に、solo 2曲と Didier Lockwood との duo 1曲を収録している。 “Solo” のデストーションがかった electric harp を聴かせる一方、 Lockwood との duo “Espace” では流麗な展開も聴かせてくれる。
5tet Océan と duo Olivier - Sens の演奏を収録したDVD Harpe(s)... (Métamorphose et Oléo Films / Nocturne, 2007, DVD) もリリースされていた。DVDは未入手未見だが、 一部は Dailymotion 等で観ることができる。 また、Nocturne 以前にも Océan によるアルバムを2タイトルリリースしている (こちらも未入手未聴)。