Antonis Anissegos [Αντώνης Ανισέγκος] は ギリシャ・マケドニア地方の中心都市テッサロニキ (Θεσσαλονίκη, GR) 出身で、 現在はベルリン (Berlin, DE) の jazz/improv の文脈で活動する piano/keyboards 奏者だ。 自身のグループ Amoebas や Lynx、Chris Dahlgren のグループ Lexicon、 Floros Floridis [Φλώρος Φλωρίδης] の trio Grix などで活動している。 oud/guitar 奏者の Thymios Atzakas [Θύμιος Ατζακάς] もテッサロニキ出身。 Pantelis Pavlidis [Παντελής Παυλίδης] や Maria Thoidou [Μαρία Θωίδου] らと folk/roots のグループ Armos Ensemble で活動する他、 1998-2004年の間はベルリンを拠点としていたこともあり、 Hayden Chisholm や Chris Dahlgren など、ドイツを拠点とするミュージシャンとの共演も多い。 σώμα は、そんな Anissegos と Atzakas によるプロジェクトだ。 σώμα の初CDリリースはテッサロニキ録音。 2人の他、同郷 Savina Yannatou & Primavera En Salonica の Yannatou と Siganidis、 Armos Ensemble の Thiodou をゲストに迎えている。
即興だけでなく作曲に基づく所もある演奏で、 12世紀インドの思想家・詩人の Basavanna の詩に基づく作品とのこと。 CD1がヴォーカル無し、CD2がヴォーカル入りだが、 いずれも contemporary classical や free improv に近いもので、 インド的もしくはギリシャ的な folk/roots の要素はほとんど感じさせない。 音数は少なめにアコースティックな楽器の響きを生かした抽象的な演奏だ。 明確なリズムやメロディの無い演奏だが、楽器の鳴りも録音も良いせいか、 澄んで明るい piano の抽象的な響きと folk/roots 的なイデオムを微かに感じさせる緩い oud や guitar の音の響きの取り合わせが気持ち良い。 Siganidis の bass もそんな音を邪魔せずに音を下支えしている。 CD2 での Yannatou や Thoidou のハイトーンで抽象的な voice も演奏にハマっていて良いのだが、 voice 無しのCD1の方が楽しめた。
CD extra として、この5人に Chris Dahlgren を加えた 6tet でのライブ映像 (MOV形式) を収録している。 このライブはギリシャのフェスティバル Music Village で収録されたもの。 2006年以来、マグネシア (Μαγνησία, GR) の Άγιος Λαυρέντιος という村で開催されているようだ。 Atzakas は、このフェスティバルのディレクターを勤めている。 公式サイトを見ると、音楽だけでなくダンスや演劇のプログラムもあり、ワークショップも多い。 村のリラックスした雰囲気の中でワークショップやコンサートをしている写真が多い。 雰囲気も良さそうで、夏休みに遊びに行くのに楽しそうなフェスティバルだ。
このCDをリリースしているのは、2006年にテッサロニキで設立されたレーベル defkaz Productions。 この σώμα が最新のリリースで、7タイトル目だ。 「contemporary, experimental and Avant Garde music」をリリースするレーベルとのこと。 MySpace で試聴する限り、他のリリースも free jazz/improv 色濃そうだ。 このレーベルの活動にも注目したい。