ニューヨーク (New York, USA) を拠点に活動する guitar 奏者 Elliott Sharp の 作曲作品 SyndaKit のコンサートだ。 Elliott Sharp は electronics も駆使したノイジーな即興物しか聴いたことが無かったので、 その minimal music に近い演奏は興味深く聴くことができた。 しかし、正直、聴いだけでは掴みかねるところもあって、少々取り残され感もあったコンサートだった。 後で楽譜を見ながら復習して、少し判ったような気になれたけれども。
SyndaKit は12名のミュージシャンのための曲で、 ♩=140の早さの一六分音符のパルスをベースとした12の短いフレーズ (Core と呼ばれる) を記した楽譜が12組用意されている。 この12組の楽譜の他に、この楽譜に基づいてどのように演奏を展開していくかの指示も書かれている。 反復 (loop) がベースになっているのだが、単純に Core を反復するのではなく、 各ミュージシャンは既に演奏されている流れ (flux) の中にある Core に 自分の手持ちの Core を付け加えてたものを反復していく。 どの Core に付加するかはミュージシャンに任されており、 また、Core 以外の短い即興フレーズを吹くことも許されているなど、即興の要素もある。 楽譜には曲の始め方終り方の指示は楽譜には無いが、 基本的に誰か1人の演奏から始まり、Elliott Sharp の指示で終えていた (フェードアウトと音を合わせて一度に終えるものと2通りあった)。 ミュージシャンと楽譜の組み合わせは特にシステマティックにせず、 演奏の合間に適宜楽譜を交換しつつ、前半後半アンコール合わせて10曲前後演奏した。
反復がベースとなっていることもあり、聴いた印象は minimal music にかなり近かった。 といっても、変化はあって、うねるように演奏は展開していくように感じられた。 楽譜を交換しただけで大きく展開が変わるのだが、 コンサート前に楽譜を予習していなかったので、 反復ベースの演奏なのにどうしてここまで変わるのか、 どこまで楽譜で決められているのか、不思議だった。
弦楽器の音は一人が目立つようなことはほとんど無く、むしろ全体でテクスチャを作るよう。 自分の席からは piano の影になってしまった Jim O'Rourke など、 何を演っていたのか全く判らなかった。 そんな中で目立ったのが管楽器3本。 特に 田村 の trumpet の強く明るいフレーズが印象に残った。 弦楽器基調のテクスチャーの上に、明るい trumpet のフレーズの反復が乗るところなど、 Maurice Ravel: Boléro みたい、などと、ふと思ってしまった。