バイエルンはミュンヘン (München, BY, DE) の近くヴァイルハイム (Weilheim) 出身の saxophone 奏者 Johannes Enders の electronic jazz (nu jazz) プロジェクトの5作目は、 ウィーン (Wien, AT) の guitar 奏者 Wolfgang Muthspiel との共同制作で、 Muthspiel のレーベル Material からのリリースだ。 Muthspiel の参加は1st Monolith (ENJA, ENJ 9433-2, 2005, CD) ぶり。 ゲストは少なめだが、同郷の Micha Acher (The Notwist, Tied & Tickled Trio) や、 John Hollenbeck (The Claudia Quintet, Meredith Monk & Vocal Ensemble) など、馴染みの顔ぶれも見える。
以前の作品でも無かったわけではないが、 ダウンテンポの曲が多くビートがソフトになり、 管楽器の音もソロを取るというよりテクスチャを織りなすようなフレーズが増えている。 Muthspiel の guitar も Monolith の時のように jazz/fusion 的なフレーズを弾くのではなく、疎に音を散りばめるように弾いている事が多い。 特に、オープニングの “Cassini” での ちりばめられた澄んだ guitar のフレーズが印象に残る。
Enders 自身の音としては、saxophone はもちろん、 organ を思わせるような synthesizer もそのテクスチャ感に貢献している。 このような音使いは、church organ をフィーチャーした Enders Dome: Enders Dome (Intuition, INT 3409-2, 2007, CD) を思わせる。 特に “Archetype” や “Notre Dame” のような曲でそれが生きている。 そして、こういう展開が基調になっているからこそ、 時々ふっと入る post rock ではあまり聴かれないような guitar のソロ (特に “Notre Dame”) も面白く感じられる。 そんな、淡々としてテクスチャルな electronica / post rock との親和性の高い音世界が気に入っている。