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Review: Various Artists: Fünf; Various Artists: Shut Up And Dance! Updated
2011/02/01
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Various Artists
(Ostgut Ton, OSTGUTCD15, 2010, 2CD)
CD1: 1)Emika: “Cooling Room” 2)Marcel Fengler: “Shiraz” 3)Prosumer: “Daybreak” 4)Substance: “Gestalts” 5)Ryan Elliott: “Abatis” 6)Nick Höppner: “ISP” 7)Marcel Dettmann: “Shelter” 8)Fiedel: “Doors To Manual” 9)Shed: “Boom Room” 10)Steffi: “My Room” 11)Dinky: “Twelve To Four” 12)Len Faki: “Kraft Und Licht” CD2: 1)Barker & Baumecker: “Drin” 2)Marcel Dettmann: “Scourer” 3)SCB: “Down Moment” 4)Tama Sumo: “Iron Glance” 5)Murat Tepeli feat. Elif Biçer: “Hold On” 6)Soundstream: “Wenn Meine Mutti Wüsste” 7)Cassy: “Never Give Up On A Mood Swing” 8)Ben Klock: “Bear” 9)Norman Nodge: “Start Up” 10)Luke Slater: “Boom Tang Shwuck” 11)Boris: “Rem” 12)Margaret Dygas: “Qunitet”
Original sounds recorded at Berghain by Emika.

2005年に活動を始めたベルリン (Berlin, DE) の techno/house レーベル Ostgut Ton の設立5周年を記念したコンピレーションだ。 その歩みを辿る内容ではなく、収録された曲はこのコンピレーションのためのものだ。 このレーベルの母体となっている ベルリン Ostbahnhof (Ost 駅) 近くの元発電所の建物を使ったクラブ Berghain / Panorama Bar (2004年オープン) で フィールド録音されたデータ量にして4GB以上の音 —— ストロボライトやドリンク類の冷蔵室が立てる低音等 — を使って、 Berghain / Panorama Bar のレジデントDJや縁のあるDJが作り上げたトラックが収録されている。 ただし、縛りは厳しく無かったようで、それ以外の音と思われるものも聞こえる。 このコンセプトとフィールド録音はロンドンからベルリンへ拠点を移した dubstep DJ Emika によるものだ。

コンセプトがしっかりしているせいか、統一感のあるコンピレーションだ。 コンセプチャルだけれども、リスニングというよりダンスフロアを意識したトラックが多い。 もともと minimal や dubstep の傾向が強いレーベルカラーだが、 トラックに使われている音のせいか、工場を思わせる硬質でメタリックな音によるミニマルな展開が基調だ。 そんな禁欲的にすら感じられる音が良い。 Rene Lowe (aka Vainqueur) とユニット Scion や DJ Pete 名義でも知られる Substance (aka Peter Kuschnereit) の “Gestalts” による Basic Channel 直系の脈動する金属音や、 Ostgut Ton レーベルのマネージャーにして Lee Jones とのユニット MyMy でも知られる Nick Höppner による “ISP” の軽快なミニマルが、 特に気に入っている。

数年前のリリースだけれども、合わせて Ostgut Ton のリリースをもう一枚紹介。

Various Artists
(Ostgut Ton, OSTGUTCD03, 2007, CD)
1)nsi.: “Bridge And Tunnel People” 2)Sleeparchive: “Perspective” 3)Âme: “Fiori” 4)Luciano: “Drunken Ballet” 5)The 7th Plain: “Symphony For The Surrealists”

Staatsballett Berlin (ベルリン州立バレエ団) は2005年に Staatsoper Under den Linden の倉庫 (Magazin) を使い Shut Up And Dance! という 若手振付家のためのオムニバス公演を行った。 そのアップデート版として、2007年に Berghain で行われたのが、 Shut Up And Dance! Updated だ。 (現在はさらに発展して、Komische Oper Berlin でのレパートリー Shut Up And Dance! Reloaded [YouTube] となっている。) このCDはその Shut Up And Dance! Updated のための音楽を収録したもの。

バレエというかコンテンポラリーダンスのための音楽ということもあると思うが、 IDM に比べると身体的だが、ダンスフロア向けに比べて少々複雑なリズムを持った曲だ。 そしてそこが気に入ってる。 脈動するようなビートの上に不規則なビートが散りばめられた nsi. (Tobias Freund & Max Loderbauer) の “Bridge And Tunnel People” や、 旋回するような六拍子のリズムの Âme の “Fiori” が耳を捉える。 コーラスのような人の声のサンプルを使った Luciano: “Drunken Ballet” も良い。

YouTube に載っているプロモーション用の Shut Up And Dance! Updated のリハーサル映像や Shut Up And Dance! Reloaded のダイジェストを観ると、 ダンス作品としても気になる。 こういう作品は音楽だけでなく舞台の様子を収録した映像と合わせて DVD でリリースして欲しい。

ところで、先週末1月29日、西麻布 eleven で Ostgut-Ton presents Sound of Panorama Bar というイベントがあった。このイベントへは行かなかったが、このために来日した Ostgut Ton レーベルの2人 Steffi と Nick Höppner のDJを、 1月27日の Dommune (Ustream を使ったストリーミング番組) で聴くことができた。 21時頃からの Nick Höppner のDJは少々大人しめに感じたけれども、 22時半頃から Steffi のDJでは Ostgut Ton らしいミニマルなDJを楽しむことが出来た。

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