Dans Les Arbres は、 jazz/improv の文脈活動するノルウェーの Grydeland、Wallumrød、Zach の3人と、 フランス出身の Xavier によるグループ。 Dans Les Arbres (ECM, ECM2058, 2008, CD) をリリースした ECM Records の紹介によると、 The New York School (John Cage, Morton Feldman ら) の影響もあるという。 実際、jazz のイデオムをほとんど感じさせない抽象的な即興を聴かせるのだけれど、 CDではは聴かれないような展開を、ライヴでは聴くことができた。
今回の来日では、アコースティックなものとエレクトリックなものと2つのセットでやっているのだが、 観たのはアコースティックな方。 Wallumrød の piano はガチガチにプリペアドされて、鈍く鳴る音はまるで打楽器のよう。 Zach の bass drums は台のように横置きされ、それ自身を叩くこともあっtが、 むしろそれを共鳴箱として、その上で様々なパーカッションをキーキー、ガチャガチャと鳴らしていた。 Grydeland の guitar や banjo もフレーズを演奏するというより、弓やつま弾きで弦を鳴らすという感じだ。 Xavier の saxophone も奇麗に音を鳴らすことはなく、強いタンギング音だけだったり、倍音成分の多い音をブォーブォーと鳴らしたり、 頭と clarinet を縦に振ることで音の強弱に変化を付けたり。
そんな演奏で始まった前半。CDで聴かれるような 疎な音の断片が織りなす薄いテクスチャのような演奏が、区切りを起きつつそのまま続くのかと予想していた。 しかし、特に曲を区切ることなく、いつのまにかグルーヴを感じるような音にまで組み上がっていった。 Wallumrød の鈍い piano の反復フレーズを中心に脈動のようなリズムを作りだし、 electronica か minimal な dub techno / minimal な音を人力でやっているようにすら感じた。 しかし、そんな演奏もまた緩く解けて、疎な音の断片へ。そんな展開が楽しめた前半だった。
後半は、三味線の 田中 を加えて。 といっても、歌でイデオムを加えることはあったけれども、 三味線の演奏は Grydeland に近く、大きな音構成の変化はなし。 後半は長めの演奏の後、短めにもう一曲。そして、アンコール。 こちらでは前半で見せたような展開は聴き取れなかった。 後半で楽しめたのは、アンコール前。 真鍮の半球をカチッカチッと叩き合わせて鳴らし、 その後にスリスリと擦り鳴らすという、Zach のフレーズを追うように、 各ミュージシャンがテクスチャを作って行くような所だった。