Samuel Blaser は contemporary jazz/improv の文脈で活動するスイス出身ベルリン在住の trombone 奏者。 Marc Ducret も参加する Quartet での Boundless (hatOLOGY, 706, 2011, CD) や As The Sea (hatOLOGY, 718, 2013, CD)、 classical 色濃い Consort In Motion での A Mirror To Machaut (Songlines, SGL1604-2, 2013, CD) など印象深いが、 今回は単独での来日。新宿 Pit Inn では、八木 美知依 トリオとの共演でのライブだった。
Blaser は特殊な奏法をことさら駆使するという程ではないが、 multiphonics と mute を駆使した音色にこだわりを感じる演奏を聴かせた。 特にそれが顕著だったのは、最初の3曲とアンコールでのソロ。 オープニングの Albert Mangelsdorff に捧げた曲などほぼ multiphonics のみで演奏したし、 3曲目やアンコールで演った Duke Ellington の曲での plunger mute を駆使しての音にのニュアンス作りも良かった。 Mangersdorff (特に multiphonics) や Ellington (というか楽団の Tricky Sam Nanton の plunger mute 使い) が好きなのだろうなあ、と、 つくづく感じさせる演奏だった。
ゲストの共演は、最初の一連のソロの後途中休憩まで bass と drums を加えてのトリオで。 途中休憩後は、まずは 八木 美知依 との duo で1曲の後、全員加わった 4tet で。 前半のトリオでは Blaser の “Boundless Suite Part I” を演奏したが、 Boundless での演奏に比べて、よりパワフルで free jazz 的な演奏に。 後半、八木の歌に良い距離感で歩む Blaser の trombone も良かったし、 相変わらずパワフルに疾走する “MZN5” も聴き応えあったが、 演奏した曲もあってか、八木 美知依 トリオに Samuel Blaser がゲスト参加したかのよう。
ソロ以外では 八木 美知依 トリオ のリズム隊の強力な存在感に持っていかれた感もあった。 それも悪く無かったけれども、Quartet や Consort In Motion といったグループの録音で聴かれるような、 音色とアンサンブルの妙で聴かせるようなライブも聴いてみたい。