Ron Miles は1980年代末から Capri や Grammavision にリーダー作を残しているアメリカの trumpet 奏者。 Bill Frisell: Quartet (Nonesuch, 1998) 以来、 度々 Frisell の録音に参加しており、 Frisell や Tucker Martine らとの nu-jazz 的なプロジェクト Floratone にも2作ともゲスト参加している。 そんな Ron Miles の最新作 (といっても去年のリリースだが) は、 Bill Frisell、Brian Blade との bass-less guitar trio 編成というもの。
かつての Dave Douglas の Tiny Bell Trio を思わせる編成だが、 ギクシャクしたフレーズで guitar と trumpet が絡みあうオープニングの “Bruise” など、まさにそんな曲だ。 ノリよい “Just Married” や “Rudy-Go-Round” でも bass を抜いた自由度のある空間に、 trumpet / guitar が自在に絡むだけでなく、drums すら自由に歌うよう。 かといって、完全に踏外すことはない。 強すぎず弱すぎず奇麗に鳴る Miles の trumpet といい、 Frisell のエフェクト控えめの guitar といい、ぎりぎりの所で歌心を離していない。
Tiny Bell Trio では klezmer 的な旋律がアクセントになっていたが、 この trio では Bing Crosby の歌った “There Ain't No Sweet Man That's Worth The Salt Of My Tears” (Fred Fisher, 1929) や、 Duke Ellington の “Doin' The Voom Voom” のような swing 時代の曲や、 Henry Mancini の映画音楽 “Days Of Wine And Roses”。 こういう所は脱線し過ぎない Clusone 3 (Michael Moore, Ernst Reijseger, Han Bennink) のよう (guitar ではなく cello, trumpet ではなく clarinet だが)。
Tiny Bell Trio や Clusone 3 など 1990年代に流行った bass-less trio の試み を連想させられるような所もあり、斬新なアプローチという程ではない。 しかし、最近でこそ American roots に傾倒したアルバムが多い Frisell だが、 Paul Motian, Joe Lovano の bass-less guitar trio (trumpet ではなく sax だが) での活動も長かったのだった。そんなことも思い出させるアルバムだった。