アムステルダム在住のピアノ奏者 向井山 朋子による 「新たな音楽空間を追求するコンサート」。 今回ば、 2台のグランドピアノを向かい合わせに並べて、 その周囲に30台余りの液晶ディスプレイを配置してのビデオインスタレーションの中でのコンサートだった。
前半は、フィルム傷しか無いような白い画面が、 演奏に合わせてかあうつだけの画面を映す中、 ピアニスト4人が2台を連弾、いわゆる 2 pianos 8 hands。 最初の François-Bernard Mâche: Styx (1984) の時はピンちこなかったが、 続く Igor Stravinsky: Le Sacre du Printemps では、 パーカッシヴな演奏を堪能。 最初は piano 2 hands で作曲されたとは聞いていたがそれを聴いたこともなく、 もちろん 2 pianos 4 hands に編曲された演奏を聴くのも初めて。 オーケストラよりメカニカルに聞こえる所が、かっこよかった。
しかし、映像の喚起力は強い。昨年は100周年ということで、 BBC による初演時の再現映像を観る機会があったが、 そのおかげで、導入部 のメロディを聴いただけで、その映像を思い出した。 そんなことも、この演奏がとっつきやすかった一因かもしれない。
後半は1920年代の白黒サイレント映画を素材にした映像を投影。 J. C. Mol による花の開花や結晶析出を低速度撮影した実験映像や、 トリノの子供コンテストの記録映像とのことだが、 サイレント映画というより、新即物主義の写真が動いているよう。 そんな白っぽい映像がステージのあちこちで蠢く様も綺麗だった。 特に開花の映像は、ステージが花畑になったよう。 演奏も、2人のデュオと手数は少なめ。 Eric Satie 作曲、John Cage 編曲の Socrates (1944) も、 そんな映像に寄り添っているようにも聴こえた。