Ensemble Moshtaq はフランス・パリ在住のイラン人作曲家/setâr 奏者 Reza Ghassemi が1988年に結成したイラン古典音楽のアンサンブル。 1995年に一旦活動停止したが、2010年に女性歌手/setâr 奏者 Sepideh Raissadat を迎えて活動を再開している。 Sepideh Raissedat はイラン出身ながら現在はカナダ・トロントを拠点に活動する女性歌手/setâr 奏者。 setâr は tambur などと類似した三弦のネック付き撥弦楽器だ。 9歳のときにイラン古典音楽の伝説的な女性歌手 Parissa に師事して音楽を始めたという。

さすが Parissa の弟子、と言う程には古典としての正統な歌い方が判っているわけではないが、 Sepideh Raissadat の若い歌声でのメリスマの効いた微分音も含む節回しが楽しめた。 Raissadat は単に伴奏を従えて歌うだけでなく、ジャケット写真にも使われているように 自ら setar を弾きながら歌うというスタイルも採っているよう。そこまで含めての魅力なのかもしれない。

2013年の Tambour inopiné の kemancheh や tombak も入った編成のほうが様々な音色の絡みがあるが、 ney も入るももの 2011年の Quatorze morceaux pour un redécollage [14 Cheerful Pieces] での setâr 4本搔き鳴らされる音が織りなす音のテクスチャが意外と楽しめた。 ただ、Accords Croisés などの音作りに慣れているせいか、 楽器音だけでなく歌声も含めて個々の音の伸びや切れに物足りなく感じてしまった。

Sepideh Raissedat は、最近は、イラン出身ながらカナダ・モントリオールを拠点に活動する Ensemble Constantinople の Kiya Tabassian らと、 近世イランのサファヴィー (Safavid) 朝の音楽の再現プロジェクトなどに取り組んでいる。 SoundCloud や YouTube で聴く限り、 こちらの方が魅力的に聞こえる。 こちらも是非、CDのような形できちんとリリースして欲しい。