Sinikka Langeland はノルウェーはフィンスコーゲン (Finnskogen, NO) を拠点に活動する kantele 奏者 / 女性民謡歌手。 フィンスコーゲンは「フィン人の森」という意味で、kantele もフィン人の民族楽器、zither や dulcimer に似た撥弦楽器だ。 1990年代以降録音をこのしており、Starflowers (ECM, ECM1996, 2007, CD) 以降、 ECM から Sinikka Langeland Ensemble 名義のアルバムをリリースしてきている。 以前にも来日したことがあるが、観るのは初めて。 今回の来日は The Half-Finished Heaven (ECM, ECM2377, 2015, CD) に合わせたもので、 ツアー前半はソロで (残念ながら観られなかったが)、 後半は viola が Lars Anders Tomter に代わって Nora Taksdal になっているもののこのアルバムでの編成に準じた編成だった。
演奏した曲は、ほぼ The Half-Finished Heaven から。 歌入りのビデオを導入に用いたりしたが、ビデオ使った演出も全体としては控えめだた。 弦数の多い concert kantele はもちろん古いタイプの small kantele も Langerand は演奏した。 kantele の澄んだ響きを生かしたアンサンブルで、Tryvge Seim や Markku Ousaskari も小さな音を多用。 即興的な要素もあるがテンション高めの抽象的な展開にはあまりならず淡々と曲を聴かせるような演奏だった。 concert kantele を弓で鳴らしたりといった特殊奏法も見せたが、抽象的な音というより、 Langeland 自身がMCで言っていたように、とりまく自然の音、馬やムースの鳴き声や鳥や虫の羽音を模したかのよう。 そんな音も、むしろ可愛らしく感じたライブだった。
CDで聴いていた時には気づかなかったのだが、“Hymn To The Fly” の変な kantele の響きはハエの羽音で、fly はだったのか、と。 凄い演奏を見たという感じでもなく、音だけならライブのPAの音より ECM の録音の方が良いかもしれないと思ったりもした。 しかし、CDで聴いていたあの音はそういう事だったのかという気付きもあったし、 音の向こうにあるイメージがよいはっきり捉えられたライブだった。