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Review: Michel Benita: Ethics; Michel Benita Ethics: River Silver
2016/06/19
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Zig-Zag Territories, ZZT100902, 2010, CD)
1)Sugar On The Ground 2)Someday 3)Monday 4)Haikool 5)Free At Last 6)Man Wo 7)Oran Nan Raiders 8)Green Power 9)Ishidatami 10)Chemistry 11)Blue Jay Way
Michel Benita (double bass, programming), Mieko Miyazaki (koto, vocals), Eivind Aarset (guitars, electronics), Matthieu Michel (trumpet, flugelhorn), Philippe Garcia (drums, sampler).
Michel Benita Ethics
(ECM, ECM2483, 2016, CD)
1)Back From The Moon 2)River Silver 3)I See Altitudes 4)Off The Coast 5)Yeavering 6)Toonari 7)Hacihi Gatsu 8)Lykken 9)Snowed In
Recorded April 2015.
Matthieu Michel (flugelhorn), Mieko Miyazaki (koto), Eivind Aarset (guitars, electronics), Michel Benita (double bass), Philippe Garcia (drums).

アルジェリア生まれで1980年代末から Label Bleu レーベルの一連の録音などフランスの jazz/improv の文脈で活動する doublebass 奏者 Michel Benita による多国籍グループ Ethics。 Benita は2000年前半 Erik Truffaz のグループで活動しており、その時の drums 奏者 Philippe Garcia も参加している。 このリズム隊に、スイス出身の flugelhorn 奏者 Matthieu Michel、 Jazzland レーベルからのリリースで知られるノルウェーの guitar 奏者 Eivind Aarset という編成は、 Mantis (Blue Note, 2001) の頃の Truffaz のグループを思わせるもの。 しかし、アラブ的な要素は無く、Huong Thanh や Nguyên Lê との共演で知られるフランスで活動する箏奏者 Mieko Miyazaki をフィーチャーしている。

2010年の1stアルバムは、Truffaz ほどビートを効かせた展開はなく、むしろゆったり浮遊感を感じさせるものだが、 electronics のテクスチャ、時にロック的な展開もあり、まだ nu jazz 色濃い仕上がり。 箏の音だけでなく、日本語での 石川 啄木の詩の朗読を入れたり、と、若干未消化にも感じられるが日本的な要素を強く感じさせる作品になっている。

ECMからの2ndアルバムは、electronics 使いがぐっと後退して、ECMらしい残響深めにアコースティックな音の響きを重視した音作り。 特に bass の音がよくて、Benita のグループなのだと実感。 ここでは、箏の音も日本文化という文脈を意識させるというより、澄んだ音を鳴らす楽器だ。 ディストーションも控えめな guitar に高く澄んだ箏のという弦の音に、 エコー深めに漂うような flugelhorn の音、ゆったり控えめに刻まれる drums。 nu jazz というより、むしろ1970-80年代のECMのよう。そんな所も気に入っている。 しかし、例えば Kenny Wheeler: Deer Wan (ECM, ECM1102, 1978) などと聴き比べると、 やはり低音の深さなどかなり深くなっており、音作りはアップデートされている。 そんな事にも気付かされたアルバムだ。