TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: Farvel: RÖK
2016/12/28
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Jazzland, No 1 / 472 128 3, 2015, CD)
1)Dämman 2)Elevate 3)Rök 4)Pingis 5)Mörka hav 6)Hitta 7)In i dimman 8)Svarta hål 9)Katharsis
Recorded 16-19 March 2014.
Isabel Sörling (voice), Otis Sandsjö (tenor saxophone, clarinet), Kim Aksnes (trumpet), Henrik Magnusson (piano), Alfred Lorinius (double bass), Carl-Johan Groth (drums).

Farvel はスウェーデンの女性歌手 Isabel Sörling 率いる Jazz/improv のグループ。 以前は Isabel Sörling Farvel の名義で活動し、 スイスのレーベル Unit からアルバム Isabel Sörling Farvel (Unit, UTR4357, 2013, CD) というリリースもある。 ノルウェーのレーベルからのこのアルバムは名義は変わったが、編成は同じ6tet。 といっても、前作は未入手未聴で、このアルバムで初めて聴いたグループだ。

編成だけ見れば、アコースティックな楽器からなるオーソドックスな2管5tetに女性歌手をフィーチャーしたものだが、 音はぐっとコンテンポラリーだ。 楽器音のテクスチャも使う静かな展開からオフビートなリズムの展開まで、 音の間合いや複雑な展開の作曲の部分が多そうな演奏だ。 しかし、Jazzland のレーベルから予想されるほど北欧の nu jazz 風ではなく、 むしろ、1990年代に hatART 〜 hatLOGY あたりからリリースされていたような techno / electronica の影響が入ってくる前の jazz/improv だ。

このような演奏をバッキングに、ではなく、 このような演奏の中の一パートとして Isabel Sörling も抽象的なヴォイシングを使う。 しかし、free improv の女性歌手によくあるアクロバティックなスキャットを駆使するのではなく、 むしろ、pop / rock の文脈の女性歌手のような軽く漂うような歌声を多く使っている。 このような演奏と歌声の組み合わせは、ありそうでない。 そんなところが新鮮に楽しめたアルバムだ。