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Review: Eiko Ishibashi, Tortois, Kaho Kogure × Billy Martin, Mônica Salmaso & André Mehmari, Fabiano do Nascimento, Medeski & Martin (live) in FESTIVAL FRUEZINHO 2025 @ Tachikawa Stage Garden, Tokyo
2025/07/13
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)

2017年から静岡県掛川市で開催されている野外音楽フェス FESTIVAL de FLUE のスピンオフ企画として 2022年に始まった都市型の音楽フェス FESTIVAL FRUEZINHO。 それなりに気になるラインナップですし、野外ではなく着席でゆっくり聴くこともできそうで、 最近めっきり足が遠のいてしまっているライブのリハビリに良いかもしれない、と、 6月14日に立川ステージガーデンで開催された FESTIVAL FRUEZINHO 2025 へ足を運びました。

立川ステージガーデン
2025/06/14, 12:00-13:20
石橋 英子 (vocals, keyboards, etc), ermhoi (chorus, synthesizer, etc), Jim O’Rourke (guitar), 山本 達久 [Tatsuhisa Yamamoto] (drums), 松丸 契 [Kei Matsumaru] (alto saxophone), 西口 明宏 [Akihiro Nishiguchi] (tenor saxophone).

12時に会場に着いて入場列待ち後のホール入りだったので、冒頭の15〜20分程は聞けませんでした。 まだ空いていた1階席の後方で座って鑑賞しました。

石橋 英子 というと漠然と映画のサウンドトラックの印象が強かったのですが、聴いた範囲ではほぼ全曲歌あり。 それも抽象的なボイスではなく、むしろ、エセリアルかるテクスチャルな dream pop に近いものでした。 未聴で臨んだのですが、今年3月リリースの新作 Antigone (Drag City, 2025) のライブとでもいう内容でしょうか。

立川ステージガーデン
2025/06/14, 13:50-15:10
John McEntire (drums, keyboards), John Herndon (drums,keyboards), Dan Bitney (keyboards,drums), Doug McCombs (bass), Jeff Parker (guitar).

そのままの席でゆっくりのつもりが客が増えて後方まで実質立席状態になったので1階を退散。 まだぽつぽつとしか客がいなかった3階正面近くの席に座って、ゆったり鑑賞しました。

シカゴのバンド Tortoise をよく聴いていたのは Millions Now Living Will Never Die (Thrill Jockey, 1996) など1990年代後半の post-rock の文脈で、2000年代に入ってからの活動についてはすっかり疎くなっていました。 そんなことから、ツインドラムで rock イデオム強い出だしには、post-rock って何だったのだろうという気分にもなりました。 しかし、やがて glockenspiel / xylophone を交えるようになるとそれらしい展開になり、 Jeff Parker もマレットを手に加わり、Steve Reich 流 minimal music 風の曲を演奏もしました。 最後には複合した複雑なリズムの手拍子を刻むことを観客に促し会場を盛り上げてフィニッシュしました。 石橋 英子 のバンドにいた Jim O'Rourke が飛び入りするかもしれないと期待しましたが、それはありませんでした。

立川ステージガーデン ホワイエ (2階席後方)
2025/06/14, 15:20-16:00
小暮 香帆 [Kaho Kogure] (dance), Billy Martin (drums, percussion).

ステージでやるのかと勘違いして会場に着くのが遅れ、最初は人垣越しに遠目に、そのうち比較的余裕があり雨にも当たらない2階客席側から観ました。

日本のコンテンポラリーダンスの文脈で活動するダンサー 小暮 香帆 と、トリにも出演するドラム/パーカッション奏者 Billy Martin (Medeski, Martin & Wood) のデュオです。 このような構成では比較的狭い空間で音に反応し対話していくような動きになりがちですが、 空間を広く取り少々厚目の長いフロアシートを使ったりと、空間を描くような動きも組み込まれていたのは、よかったでしょうか。 それだけに、雨で滑りが悪くなったか重くなってしまったかフロアシートの取り回しを使った演出がうまく行かなかったように見えたのは残念でした。

立川ステージガーデン
2025/06/14, 16:30-17:50
Mônica Salmaso (vocals, percussion), André Mehmari (piano).

ホワイエからの流れで席に座れたので、2階正面の席から観ました。

Mônica Salmaso といえば1990年代後半に Pau Brasil 関連のミュージシャンのバッキングでのソロ作や ビックバンド Orquestra Popular de Câmara で注目されたブラジル・サンパウロの女性歌手です。 2000年前後に少々後追いで録音を追いかけていた頃がありましたが、最近はすっかり疎くなっていました。 今回は、ピアノ奏者の André Mehmari との Elis & Tom (Philips (Brasil) / Verve (US), 1974) トリビュートのライブでした。 Salmaso の歌の伴奏に Mehmari に徹することなく流麗な演奏で、Salmaso もパーカッションを手に少し渋みの効いた落ち着いた歌声で、2人で対等に組み合って作り上げていくよう。 ミニマリスト的というほど音数少ないわけではないけれども無駄なく端正に聴かせました。

立川ステージガーデン ホワイエ (2階席後方)
2025/06/14, 18:00-18:40
Fabiano do Nascimento (guitar, electronics, vocals), 小暮 香帆 [Kaho Kogure] (dance).

ブラジル出身でアメリカ・ロサンゼルスと東京を拠点に活動するミュージシャンです。 2000年代から活動するミュージシャンですが、自分が知ったのは2020年代に入って、 Sam Gendel / Leaving Records 界隈の録音です。 リバーブ深めなアコースティック・ギターに微かにエレクトロニクスを効かせ、テクスチャ的な歌を軽く添えます。 半屋外の人垣の中でというより観客の少なめのギャラリー的な空間でのライブがハマりそう、と。 後半、小暮がダンスで絡みましたが、ギリギリまで人垣が迫ったような状態だったので、少々厳しかったでしょうか。

立川ステージガーデン
2025/06/14, 19:20-21:00
John Medeski (keyboards), Billy Martin (drums, percussion).

一旦外に出て、カフェにて軽食で小腹を満たしつつの休憩。 その後、ホールに戻っても席が難しいかなとも予想したのですが、あっさり座れたので、2階正面の席から観ました。

1990年代にジャムバンドとして注目されたニューヨークのバンド Medeski Martin & Wood です。 Friday Afternoon In The Universe (Gramavision, 1995) など独立系レーベル時代は好んで聴いてましたが、 1998年のメジャー (Blue Note / Capital EMI) 移籍以降は疎くなってしまっていました。 今回の来日はベースの Chris Wood 抜きのデュオの編成ですが、Wood が脱退してしまったというわけではないようです。 オルガンのフレーズもグルーヴィなジャムバンドらしい演奏と 彼らのバックグラウンドであるフリーなジャズ/即興の抽象度高めの演奏を行き来する展開でした。 グルーヴィな展開の時の方が観客は盛り上がりますが、 アウトな展開でのMedeskiのオルガンのSF映画のサントラのようなスペーシーな響きや、Martinのエフェクト効かせた小型フレームドラムの細かく刻む音を楽しみました。

最近好んでよく聴いている、というより、昔よく聴いていたけれども最近は少々疎くなっていた音楽で、 行くまでどこまで楽しめるか未知数でした。 最悪退屈してしまったら、音楽を聴きながら読書でもいいかな、と思ってましたが、会場で読書することはありませんでした。 体力的にもさほど厳しくなく、12時過ぎから21時頃までの約9時間、休憩を挟みつつもライブ音楽漬けの1日を楽しむことができました。 しかし、Tortoise や Medeski Martin & Wood は1990年代後半、Mônica Salmasoも2000年前後、と、あれから四半世紀経ってしまったのかという感慨に浸ってしまいました。