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Review: Kronos Quartet plays <with> Terry Riley @ Tokyo University of the Arts Sogakudo Hall, Tokyo
2025/07/21
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Kronos Quartet plays <with> Terry Riley
東京藝術大学奏楽堂
2025/06/28, 15:00-17:20
«Salome Dances For Peace - 5. Good Medicine: Good Medicine Dance» (1985-86), «Welcome Piece for Gabriela & Ayane» (new work), «Cadenza on the Night Plain» (1983).
improvisation: Terry Riley & Sara, improvisation: Terry Riley, Sara & Kronos Quartet.
Terry Riley, Sara [宮本 沙羅]; Kronos Quartet: David Harrington (violin), Gabriela Díaz (violin), Ayane Kozasa [小笹 文音] (viola), Paul Wiancko (cello).

コロナ禍でアメリカへ帰ることができなくなったことを契機に日本を拠点としている作曲家・演奏家 Terry Riley の、 長年 Riley の曲を演奏してきた Kronos Quartet を迎えての、90歳誕生日を記念したコンサートです。 前半約1時間は Kronos Quartet による Terry Riley の曲の演奏で、Kronos Quartet 新メンバー2名に宛てた新曲を挟んで、1980年代の曲から。 80歳を記念したアンソロジー One Earth, One People, One Love: Kronos Plays Terry Riley (Nonesuch, 538925-2, 2015) を通してある程度予想はしていましたが、 いわゆるミニマル・ミュージック的な反復要素はすでにかなり後退しており、ヴァイオリン属ならではの微分音やグリッサンド使いもあって、 むしろ北インド古典音楽などのモーダルな音楽に近い印象を受ける演奏でした。

後半は即興演奏。まずは、Riley と日本拠点後の共演者 Sara [宮本 沙羅] によるキーボード、タブレットのデュオ、 というよりも Sara は Riley のアシスタント的な演奏で、実質、拡張された Riley のソロでしょうか。 即興といってもアブストラクトなものではなく、インド的なモードにジャズのスタンダードのフレーズを交えた演奏は、モーダルというかスピリチュアルなジャズのようにも感じられました。 最近はこんなことをやっているのか、と。 最後は Kronos Quartet も加えての大団円的なフィナーレで、 こちらは初期の曲 «A Rainbow In Curved Air» (1968) に基づく即興でした。

Steve Reich, Philip Glass と並ぶミニマル・ミュージックのパイオニアと見做されることが多い作曲家ですが、 今回のコンサートを聴いて改めて、今はそこからはかなり外れた所にいるのだな、と実感しました。