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Review: Troubleyn / Jan Fabre, Je Suis Sang: Conte De Fées Médieval
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/02/17
彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2007/02/17, 16:00-17:30
Text, Scenography & Choreography: Jan Fabre. Created on 2001.
Actors, Dancers: Anny Czupper, Geert Vaes, Els Deceukelier, Cédric Charron, Olivier Dubois, Katrien Bruyneel, Barbara de Coninck, Ivana Jozic, Linda Adami, Maria Stamenkovic-Herranz, Vicente Arlandis, Tawny Andersen, Guillaume Marie, Sylvia Camarda, Marina Kaptijn, Sung-Im Her; Musicians: Stijn Dickel, Dimitri Brusselmans, Helmut van den Meersschaut, Dieter Bossu.

ベルギー (Belguim) の現代アートの作家にして舞台作品の演出家 Jan Fabre の 去年の Quando L'Uomo Principale È Una Donna (2004; 彩の国さいたま芸術劇場, 2006) (レビュー) に続いて2回目の日本公演は、2001年の Festival d'Avignon で上演した作品の再演だ。 ヨーロッパ中世の騎士と貴婦人のイメージを利用した舞台作品だが、 精神的な結びつきを重要とする騎士道精神の物語にはならず、 むしろその裏というか逆の、血生臭く性的な身体のイメージを表に出していた。 意外と去年の作品と共通すると感じるところがあって、 なるほどと思いつつ観るところはあった。

最初の方にあった鎧を着たダンサーたちが群舞するシーンは迫力があったし、 最後近くにあった後ろ手に縛られたダンサーたちがもがくように踊るシーンも印象に残った。 あと、エンディングの鉄のテーブルを壁のように立てて並べて その下から赤ワインが染みだしてくる演出は、 死んだ騎士の甲胄の隙間から、もしくは鉄の拷問装置の隙間から、 血が染み出してくるかのようで、不気味ながらカッコよかった。 こういう時折見せる鬼気迫るような雰囲気は良いのだが、 白いドレスを着た貴婦人たちがドレスを脱着して騒ぐような場面など、 むしろ見ていて醒めてしまうように感じるところも少くなかった。 セリフに負うところが多かったというのも、 舞台に入りこみきれなかった一因かもしれないが。

最後にダンサーたちが全裸となって赤ワインを浴びて 舞台をのたうち回るように踊るシーンなど、まさに、去年の Quando L'Uomo Principale È Una Donna を思わせるものだし、 劇中歌 "Volare" に相当するのは、Ju Suis Sang では Dusty Springfield, "Song Of A Preacher Man" だろうか。 そういう演出が Fabre は好きなのだろうか、と観ていて思ってしまった。

音楽は electric guitar 3人と helicon (sousaphone 様の金管楽器) が1人が 生演奏で、俳優やダンサーと入り交じりながら演奏していた。 鬼気迫るような踊りやドタバタ騒ぎ的な展開などで使われるという感じだったが、 Glenn Branca 的な歪んだ electric guitar のアンサンブルに helicon の低音が絡むというのが、意外と合っていて面白く感じられた。 特に、最初にこの4人の演奏が使われたのは、 中盤にさしかかった頃の虱取りを思わせるダンスのシーンだが、 陰部を攪くしぐさと、electric guitar を弾く動きが重なるようで、面白かった。 あと、静かな響をたてる helicon に率いられて、 いわゆる「不具者」たちが行進するようなシーンも印象に残った。 生演奏の方がダンスの動きと息の合い方が良くなるような作品では無かったが、 そういった所に音楽演奏のパフォーマンス性が生かされているようで、良かったと思う。

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