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Review: L'Ateneu Popular 9 Barris, Circus Klezmer
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/11/04
大道芸ワールドカップ in 静岡 駿府公園エリア プレミアムステージ
2007/11/02, 18:00-19:00
Original idea & Direction: Adrián Schvarzstein. Dramaturgie: Irma Borges.
Actors: Maite Sanjuan (aka Lola) (aerial), Emiliano Sanchez Alessi (juggling), Cristina Solé (acrobat), Joan Català (acrobat, juggling), Adrián Schvarzstein (comic actor); Musicians: Petra Rochau (accordion), Rebecca Macauley (violin), Nigel Haywood (clarinet).

スペイン・カタルーニャの首都バルセロナ (Barcelona, Catalunya, ES) の サーカス劇場/カンパニー L'Ateneu Popular 9 Barris は アニュアルの Circ d'Hivern (冬のサーカス) というシリーズを1996年に始めている。 Circus Klezmer は その第9作として2004-2005のシーズンに初演された作品だ。 この作品が 大道芸ワールドカップ in 静岡 2007 の 「プレミアムサーカス」枠で上演された。

アシュケナジ (Ashkenazi; 東欧系のユダヤ人 (Jewish)) の音楽 Klezmer を舞台音楽として使い、 20世紀初頭の東欧のユダヤ人一家を舞台に、結婚式祝宴にいたる数日のドタバタを エアリアル、ジャグリングやアクロバットなどのパフォーマンスからなる 演劇的なサーカスに仕立てた作品だ。 ちなみに、出演もしていた構想・監督の Schvarzstein はユダヤ系だ。 公式サイトにはロシア (Russia) 出身のユダヤ人画家 Marc Chagall (1887-1985) の作品に着想を得たとあるが、 それほど幻想的でロマンチックな印象は受けなかった。 そう言われなければ気付かないだろう。

音楽はジプシー (Gypsy) のものに近くサーカス的な展開に合っている一方、 ジブシーほど非ヨーロッパ的ではなく20世紀初頭モダンな市民に近く、 そのライフスタイルもそれなりに身近に感じられる。 そこを狙ったというわけではないかもしれないが、 ユダヤ人一家という設定で klezmer を音楽に使ったのは巧いと思ってしまった。

印象に残ったシーンは、Sanjuan の赤いティッシュを使った空中芸、 Solé & Català の夫婦喧嘩なアクロバット、 Schvarzstein、Alessi、Català の3人によるテーブルを囲んでの食器ジャグリング だろうか。 しかし、高度な技を次々と繰り出して引きつけるというより、 細かなニュアンスで雰囲気を作り出していくという舞台だった。 舞台の雰囲気は、結婚式の祝宴というハッピーエンドもあり、 コミカルながら特にキツい諷刺もなく可愛らしい感じだった。 観客弄りもそれなりにやり、特に男性1人を間男役や楽団員として、 女性1人をもう一人の花嫁役として使っていた。 もちろん、ミュージシャン3人も単に演奏するだけでなくそれなりに絡んでいた。

諷刺的な面が物足りなく感じたが、 こういう可愛らしい感じの舞台も嫌いではない。 舞台に近い席で観ていたこともあり、むしろ、 その可愛らしい雰囲気がツボにハマって楽しんで観ることができた。 会場は客席数1,000はある大きなテントだったが、 雰囲気のウェイトが大きい作品なので、 客席数200〜300程度の小劇場向けの公演かもしれない。

ちなみに、Circus Klezmer の出演者は、 大道芸ワールドカップ in 静岡 2007 のオン部門とウォーキング・ストリート部門にも 参加していた。大道芸ワールドカップ in 静岡 でのエントリ名は、 Adrián Schvarzstein が「グリーンマン (The Green Man)」、 Maite Sanjuan が「ローラ (Lola)」 (写真)、 Emiliano Sanchez Alessi が「エミリアーノ (Emiliano)」 (写真)、 Cristina Solé & Joan Català が「ゴールデニエフスキー ブラザーズ (Goldenievsky Brothers)」 (写真)、 ミュージシャン3人 (Petra Rochau、Rebecca Macauley、Nigel Haywood) はグループ 「ヴィルニーツ (The Vilniets)」 (写真)。 The Green Man は Schvarzstein のレパートリーのタイトルだが、 Goldenievsky Brothers と The Vilniets は普段用いているグループ名では無さそうだ。 Circus Klezmer と最も雰囲気が違いそうな「グリーンマン」だけ観ることが出来なかったのは、少々残念。

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