写美のお正月 2008 で観た展覧会について、軽くメモ。
メディアアートと文学の接点を探るという展覧会だったが、 いわゆるダイナミックタイポグラフィに インタラクティヴなインタフェースを付けたような作品が多く、 ちょっと残念。
松浦 寿輝 の小説に基づく 近森 基++久納 鏡子 「月の光」 (2007) は、 床の円形の光の投影の中にインタラクティヴでちょっと不自然な影の投影をする作品。 あいかわらずだけど、せっかくの小説との関係性が順方向であまり展開が広がるような感じではなかったのが残念。
無邪気に遊べたのは 石井 陽子 の「情報を降らせるインターフェース」 だったが、 それ以上のものは無かった。
参考出品されていた Nintendo DS の「DS図書館」を使ってみて、 このインタフェースならあとはコンテンツ次第。 「DS図書館」のラインナップがダメとは思わないけど、自分の場合は、 白水社の「新しい世界の文学」シリーズ のようなものが読めるようになったら買ってしまうかもしれない。
日本の行楽地等の人混みを捉えた写真シリーズ「砂を数える」の写真家 という程度の予備知識の無かったが、やっぱりそれが一番面白かった。 それも、モノクロの「砂を数える」よりも 今回の展覧会で初めて観たカラーの「新・砂を数える」が良かった。 少々人工的というかプラスチックのような明るい色彩の画面で、 それが、行楽地の人混みというテーマに合致しているように感じられた。
1990年代に観た「銭湯」シリーズが気に入っていた 屋代 敏博 (レビュー) が入っていたので、東京都写真美術館の3つの展覧会の中で最も期待していたのだが、 期待が大き過ぎたか肩透かし。
今回初めて観た 屋代 敏博 の「回転回」シリーズは、 アングルを対象にした左右の写真を合わせる所などに「銭湯」シリーズを受け継いでいるが、 形式的な画面の中に社会制度を浮かびあがらせるようなコンセプチャルな面が後退して、 ワークショップ的な緩さが入りこんでしまったという感じ。 楽しそうにワークショップに参加する子供達を捉えたドキュメンタリビデオを観ていると、 こういう作品の有り方も理解はできるが、 自分が求めているものとは違うように感じてしまった。
同じような緩さは、田中 巧起 の ビール工場を題材にしたビデオと廃材を使ったインスタレーションからなる 作品からも受けてしまった。 伊瀬 聖子 の暗めの風景をベースとしたサウンド付きのビデオインスタレーションや、 大橋 仁 の海外の売春婦を捉えた写真は、 それらに比べると良くも悪くもオーソドックスな作品だ。