1975年に結成されたブラジル ミナスジェライス州ベロオリゾンテ (Belo Horizonte, Minas Gerais, BR) のダンス・カンパニーの日本初公演。 その舞台は、演出やコンセプトでもなく、際だったダンサーでもなく、 身体と踊りそのもので観せるようなものだった。
舞台美術は、 Parabelo は舞台後方にイメージが掲げられるだけ。 Onqotô にしても どこからでも出入り可能な細かいスリットの入った灰色の布で 大きく半円柱状の空間を作っただけだ。 衣裳も身体の線がくっきり出るスポーツ用レオタード様のもので、 Parabelo では黒字に白ドットというのがあったが、 ほとんど柄無しの鮮やかな単色だ。 そんなミニマルな美術と衣裳で、 5〜15名程度のダンサーが音楽に合わせて踊ることによって作られる舞台だ。 その踊りも、 スチル写真やインターネットで観られる映像の断片から受けていた印象ほど 不自然なものではなく、 ポストモダン以前のモダンダンスやバレエの動きがベースだ。
このカンパニーのポイントは、音楽にポリリズミックで ビートに複雑なアクセントを持った物を多く使っていることだろう。 複雑なアクセントに動きを合わせることにより、ぎくしゃくくねくねした動きが生じる。 さらに、ソロ、デュオ以外では、 ポリリズムを作り出しているパーカッションの各パート別に 違うダンスを踊るようであり、 それらの重ね合わせが、動きのポリリズムを作り出していた。 そういう点でも、ソロやデュオの場面よりも、 多くのダンサーが踊っている場面の方が良かった。
ちなみに、音楽は Parabelo も Onqotô も José Miguel Wisnik が手掛けている。 Wisnik はサンパウロ (São Paulo) 出身の SSW。 もともと classical の文脈で piano 奏者として活動しており、 SSW としては1992年に第1作をリリースしている。 SSWとしての作風は、共演してるミュージシャンを見ても、 遅れて来た Vanguarda Paulistana (関連発言) といった感じだ。 Wisnik と共に Parabelo を手掛けている Tom Zé と Onqotó を手掛けている Caetano Veloso は、 共にバイーア (Bahia) 出身、1960年代末 Tropicália の文脈から出てきたSSWとして有名だろう。 ちなみに、他の作品でも、 ベロオリゾンテの自作楽器音楽グループ Uakti のリーダー Marco Antônio Guimarães (Bach, 1995)、 サンパウロのSSW Arnaldo Antunes (O Corpo, 1999) など、 個性的なブラジルのミュージシャンが音楽を手掛けている。 自分が Grupo Corpo のことを知ったのも、 むしろこういうったミュージシャンの活動を追っていてだった。