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Review: 『アート・タイムス Vol.3: 特集: 新レフ』 (美術書)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/06/10
(デラシネ通信社, no ISBN, 2008-05-28)
via 「アートタイムス打ち上げ」 『クマのデラシネ日記』 2008-06-03

大島 幹雄 さんが発行している同人誌 『アート・タイムス』、 年1号ペースながらついに第3号が出ました。 特集は、1927-8年に発行された Владимир Маяковский (Vladimir Mayakovsky) 編集長のロシア・アヴァンギャルドの雑誌 Новый Леф (『新レフ』)。 責任編集 桑野 隆 ということで、 同人誌に埋もれさせておくにはもったいない ロシア・アヴァンギャルドに関するエッセー (小論文) が満載です。 『新レフ』全22号 (合併号2号を含む) の全目次 (ただし日本語訳) など、 資料的にも貴重です。

中でも特に、桑野 隆 「未上演の討論劇『子どもがほしい!』」に、とても興味を引かれました。 Сергей Третьяков (Sergei Tretyakov) による1926年の戯曲 Хочу Ребёнка (I Want A Baby) についての小論です。 ほぼ同時代に作られた映画 Третья Мещанская (Bed And Sofa, 1927; レビュー) とも共通する 家庭や結婚、男女関係を問い直すような作品で、 ロシア・アヴァンギャルドはそこまで革命しようとしたんだなあ、と感慨深いです。 舞台装置の模型の写真や、模型に向かう舞台美術を手掛けた Эль Лисицкий (El Lissitzky) の写真も載っています。これがまたカッコいい。 ちゃんと戯曲を読んでみたくなりました。 しかし、1995年に Univ. Of Birmingham Pr. から 出版された英訳本はあるようですが既に入手困難、 和訳は無いようですね……。

(以上、談話室への発言として書かれたものの抜粋です。)