固定カメラによるビデオやアニメーションを使った 絵画的なビデオ作品を集めた展覧会だ。 液晶ディスプレイを屏風のように配した 千住 博 『水の森』、 服を脱ぐ人物のパーツのビデオをパラパラのように配した液晶ディスプレイに写した 鷹野 隆大 『電動ぱらぱら』シリーズのように、 液晶ディスプレイならではの表現もあったが、 プロジェクタで投影している作品もそれなりにあり、 特に、液晶ディスプレイというメディアに拘った展示では無い。
最も印象に残ったのは、 Sam Taylor-Wood の "Still Life" (2001) と "Little Death" (2002)。 17世紀静物画のようにザル上の果物の山や壁にかけられた狩られた兎が 朽ちていく様子を早送り (正確には定点観測写真を繋げて動画にして) 見せる作品だ。 隣に展示された Eve Sussman, "Fergus Lifted" (2006) に典型的なように、 スローモーションで絵画的に観せる手法が多いこの分野で、 朽ちる時間の長さもあって早送りながら絵画的に見える所が、 少々逆説的に感じられて面白かった。
いくらでもアニメーション化できそうなその図柄の Julian Opie の作品も、 微妙な動きだけに抑えているところが、 その軽快な単調さに見合っているように感じられて、興味深かった。
全体としても楽しんで観られた展覧会だったが、 企画に合わせて作品を借り集めるには限界もあり仕方ないと思うが、 この手の企画であればあの作品が、と観ながら思ってしまう所もあった。 Bill Viola など Hatsu-Yume (First Dream) 展 (森美術館, 2006; レビュー) でまとめ観してしまった後だけに、 もっと良い作品があるのに、と思ってしまった。 他にも、映画 "Psycho" を24時間に引きのばした Douglas Gordon, "24 Hour Psycho" (1993) とか、 カメラの前で記念写真のようにして1時間静止させられた人々と その解放の歓声を上げる瞬間をユーモラスに捉えた Gillian Wearing, "60 Minites Silence" (1997) とか。 Opie や Taylor-Wood もそうだが、Gordon や Wearing の作品を思い出して、 液晶絵画的な作品は YBA (Young British Artists) が得意とした分野なのかもしれない、 とも思ったりもした。