高梨 豊 は、1968年の創刊から写真同人誌 『プロヴォーク』 (provoke) に参加し、 1990年代には赤瀬川原平、秋山祐徳太子とライカ同盟を結成したことで知られる写真家だ。 『光のフィールドノート』は、その1960年代から現在に至る作品を一望できる回顧展だ。
最も印象に残ったのは、やはり、1970年前後の写真、 特に『プロヴォーク』へ掲載した写真を中心としてまとめたという 『都市へ』 (Toward the City, 1974) だ。 アレブレボケなモノクロ写真なのだが、 被写体が建設中の高速道路の高架だったり煙を吐く工場だったりとランドスケープ的。 水平線が律義に同程度の角度で左下りな所もコンセプチャルに感じられる所もあり、 興味深かった。コンポラ写真も単純な技法の否定ではなかったのだな、と。
あと、この展覧会で、高梨が1959-61年に桑沢デザイン研究所で 大辻 清司 [レビュー] に師事していたことを知った。 大辻と『プロヴォーク』は対極にあったような印象も強いのだが、そう言われてみると、 『都市へ』に感じるコンセプチャルな雰囲気に納得させられる所もあった。