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Review: 『琵琶法師 山鹿良之』 (監督: 青池 憲司) (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/08/09
1992 / 日本 / 80min. / 16mm color.
オフィスケイエス作品. 監督: 青池 憲司.

兵藤 裕己 『琵琶法師 —— <異界>を語る人びと』 (岩波新書 1184. 岩波書店. ISBN978-4-00-431184-3. 2009-04-21) [関連発言] の付録DVDに『俊徳丸』が収録されていた 山鹿良之 のドキュメンタリーです。 説経節『小栗判官』 (抜粋) を演ずる様子を中心に、 その合間に 山鹿 の日常の様子や かまど祓い などの他の宗教儀礼の様子も捉えています。 『小栗判官』の話を追う助けとして、 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の岩佐又兵衛『小栗判官絵巻』を使った 現代日本語による物語の説明も入ります。これが無かったら、話を追うのは難しかったかも。

浅草木馬亭での公演の様子もあって、当時知っていたら観に行ったのに、と思いました。 しかし、浅草寺参りも2度目とか、肥後界隈から出る機会もそれなりにあった人だったのだな、と。 DVDで観ていたこともあり、説経節のパフォーマンスについてはある程度予想範囲内。 かまど祓いなどでの般若心経の琵琶弾き語りもかっこよかったですし、 他のレパートリーも観てみたかったです。軍記物やユーモラスな演目での表情の違いとか。 しかし、芸が凄いのか、盲目ならではの雰囲気が凄いのか、百歳近い歳の雰囲気が凄いのか、 渾然一体としています。 DVDや映画での印象が強過ぎて、若い時にどんなパフォーマンスをしていたのか想像できません。

ちなみに、映像ではありませんが、録音であれば、 『肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界 〜 語りと神事 〜』 (日本伝統文化振興財団, VZCG-8377, 2007, 3CD) というリリースがあります。 買ってはいませんが、試聴した限りでは、 般若心経も含む「ワタマシ」は1963年と若い頃の録音で、映画の中での演奏よりかっこいいです。 声が若い (といっても既に60歳過ぎですが)。 1曲を除いて1960-70年代の録音なので、DVDや映画よりも若いパフォーマンスが聴かれそうです。 買うべきか……。

(以上、談話室への発言として書かれたものの抜粋です。)