TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 大友 良英 + 伊東 篤宏 + 梅田 哲也 + Sachiko M + 堀尾 寛太 + 毛利 悠子 + 山川 冬樹 『休符だらけの音楽装置』 @ 旧千代田区立練成中学校屋上 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/10/14
大友 良英 + 伊東 篤宏 + 梅田 哲也 + Sachiko M + 堀尾 寛太 + 毛利 悠子 + 山川 冬樹
旧千代田区立練成中学校屋上
2009/10/10-11/03, 17:30-21:00.

大友 良英 が7月から都内各所で開催している一連の展覧会 『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』 の2つめの展示が、旧千代田区立練成中学校 の屋上で開催されている。 最初の展示となる 原宿VACANT での 『Without Records』 が 良かったので、 12日のオープニング・ライブに合わせて観て来た。

球技場として使われていた中学校屋上は、球が外に出ないよう、巨大なケージになっている。 そのケージの中の十数箇所に音の出るオブジェが設置されていた。 そのオブジェは選りすぐりの素材を使い精巧に作り込んだ存在感のある立体作品というより、 むしろ、その場にあるあり合わせの物を組み合わせて作った器用仕事で、 風雨にさらされてくすんだ校舎屋上のコンクリートや金網に馴染むようなものだった。 風などに反応するオブジェが目についたが、 アコースティックに音を出すだけでなく、 electric guitar とギターアンプを使ったり、 ノートパソコン等のを仕込んで電子的な雑音を使ったり。 このような音選びは、大友 のアンサンブルらしさだろうか。 器用仕事でローファイに仕上げた電気電子風鈴みたい、と思う所もあった。

通常時に観ていたら緩い展示だと軽く流して済ましていたかもしれない。 器用仕事的な面白さはあるけど、造形的に興味深いという程ではない。 オブジェの出す音量はかなり抑えられているのだが、 人も多く必ずしも静かに聴き入っているわけでない、 その繊細な音の響きの機微を楽しむという場の雰囲気でも無かった。 しかし、ライブというとこで展示を作成した7人の動きもあり、 それに加えて、百人以上と思われる観客の動きもあり、 16時半から1時間余り、退屈することは無かった。 演奏を楽しんだというより、屋上の上でちょっとした出来事が起き、 それで人々が緩く集散する、そんな様子を観ているのが面白かった。

ライブといっても展覧会のオープニングなので、オブジェを操作するというよりも、 サウンド・オブジェの一部となるようなものが多いかと予想していた。 しかし、実際のところ、普通の音楽における演奏に近い印象を受けた。 それは、作家側の意図というより、 作家がオブジェを操作していると回りに観客の輪が出来てしまうという状況に依る所が大きい。 その一方で、Sachiko M がバケツに素足を突っ込んでサウンド・オブジェの一部と化していた時もあったのだが、 そういう時は周囲にほとんど誰も集まっていなかった、ということが印象に残った。 大友 良英 が自転車で屋上を緩く走り回っているときも、多くの人は気にかけていなかった。 こういった行為と座り込んで緩く electric guitar を弾くような行為が対等に置かれている所が、 このパフォーマンスの良さの一つだったと思うけれども。 というわけで、自分はあまり人垣に混じらず眺めていた。 そして、観客を注目させる演奏を感じさせる行為が何で、観客の関心を惹かない行為が何なのか、 観客の集散の動きを通して見ているのが、興味深かった。

通常の展示は17時半からとほぼ日没後しか観られないのだが、ライブは16時半から。 1時間程は明るい中でオプジェを観ることができた。 これも、ライブに合わせて観に行った理由の一つだった。 11/3にもクロージングのライブが予定されているので、 明るい中でオブジェを観たい人は、それに合わせて観に行くのも良いだろう。 しかし、通常の展示の時、日没後、まばらな客の中で観ると、かなり違う印象となりそうだ。 余裕があれば、人の少なそうな夜の展示というのも観に行きたい。 それも雨の日とか微妙な天候な時に。

ところで、オープニングのライブの最中は特に撮影禁止という様子ではなかったので、 携帯電話のカメラを使って、その様子をいくつか撮影した。 その写真をはてなフォトライフに載せてある: tfj's fotofile > Ensemble09-1012

ちなみに、会場の旧千代田区立練成中学校は、 今までも、アートフェア 101TOKYO の会場として使われたことがある建物だ。 来年2月から ちよだアートスクエア (仮称) となることが予定されており、現在、その準備が進められている。 その運営会社 commandA の代表は、 アーティスト・イニシアティブ・オーガニゼーション commandN の代表でもある現代美術作家の 中村 政人。 十余年前の1998年に練成中学校近くの犬塚ビルの地階一階で始まった commandN が こういう形に発展したというのも、感慨深い。