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Review: Romeo Castellucci / Socìetas Raffaello Sanzio: Divina Commedia. Inferno - Purgatorio - Paradiso (『神曲 地獄編 - 煉獄篇 - 天国篇』) @ 東京芸術劇場 / 世田谷パブリックシアター / にしすがも創造舎 (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/12/27
Romeo Castellucci / Socìetas Raffaello Sanzio
Divina Commedia. Inferno
東京芸術劇場
2009/12/12, 17:00-18:30
Direction, Set design, Lighting, Costumes: Romeo Castellucci. Freely inspired by La Divina Commedia by Dante Alighieri.
Premier: Festival d'Avignon, 2008.
Romeo Castellucci / Socìetas Raffaello Sanzio
Divina Commedia. Purgatorio
世田谷パブリックシアター
2009/12/20, 13:00-14:30.
Direction, Set design, Lighting and Costumes: Romeo Castellucci, Freely inspired by La Divina Commedia by Dante Alighieri.
Cast: Irena Radmanovic (the First Star), Pier Paolo Zimmermann (the Second Star), Sergio Scarlatella (the Third Star), Juri Roverato (the Third Star II), Davide Savorani (the Second Star II).
Premier: Festival d'Avignon, 2008.
Romeo Castellucci / Socìetas Raffaello Sanzio
Divina Commedia. Paradiso
にしすがも創造舎
2009/12/17-21, 15:00-17:30 & 19:00-21:30.
Concept: Romeo Castelluci, Freely inspired by La Divina Commedia by Dante Alighieri. Collaboration to the set design: Giacomo Strada.
Premier: Festival d'Avignon, 2008.

イタリア・エミリア州 (Emilia-Romagna, IT) 出身の演出家 Romeo Castellucci による新作三部作は、 14世紀初頭に書かれた Dante Alighieri: La Divina Commedia (ダンテ 『神曲』) から自由に着想したもの。 といっても、三部構成は Dante のものに倣ってはいるが、 それをなぞって演劇化したというわけではない。 Castellucci の作品は今年3月に Hey Girl! [レビュー] を観ている。 その作風に Inferno は近かったけれども、 三部作それぞれの作風がかなり異なっていたので、通して観た後、少々印象が混乱してしまった。

最初に観た Inferno は、 Hey Girl! と同じく、 俳優やダンサーの演技ではなく舞台装置や照明、音響でその雰囲気を作り出す舞台だった。 大音響や閃光、スモークなどけれん味を感じる演出も同様。 この作品では、さらに動物 (犬や馬) を登場させたりピアノを燃やしたりもしていたが、 演出が映像的過ぎてあまり生々しく感じられなかかった。 子供を含むエキストラの多用の方が、 演技に依存しない舞台づくりがより徹底されていたようで、興味深かった。 Inferno に感じられたことで、気付いたのだが、 Hey Girl! も、 実は Castellucci の中世ゴス趣味だったのかなと腑に落ちた気がした。 カラフル/現代/キッチュ/俗とモノクローム/中世/ゴシック/聖の対比と接続を 感じられる舞台だった。 ちなみに、自分が観た公演では、 アフターパフォーマンストークとして Castellucci × 飴屋 法水 の対談があった。 その中で、この作品中で俳優に Andy Warhol を演じさせている点についての話を 聞くことができた。 その話では、Andy Warhol を平凡を芸術にするトリックスターとして象徴的に使ったのことだった。 キッチュとゴシックの併置を感じていた所だったので、妙に納得させられたように感じた。

続いて観たのは Paradiso。 5分程度で鑑賞できるインスタレーション作品だ。 巨大な白い方形に開けられた四角い穴から中に入ると、全面白い空間の奥に黒い丸い穴があった。 さらにその穴に入ると、黒塗りの背の高い空間で、中はむっとする湿気。 奥の壁から湯が滝のように落ちている。 上を見上げると、湯の吹き出し口から裸白塗りの男が上半身を突き出して身悶えていた。 天国というより地獄に近い逆説的なイメージの提示はわからないではないが、 Inferno との繋がりも見えず。 三部作を通して観れば、わかる所もあるかもしれない、と。

最後に観たのは Purgatorio。 この作品では、舞台上に丁寧にセットを作りこんでいた。 さらに、エキストラではなく俳優を使用。 前半では、デフォルメされた動作や発声は用いずに、つぶやき声すら多用していた。 また、観客と舞台の間にほとんど透明なスクリーンを張り、そこに字幕を投影したり。 まるで、映画やテレビを舞台上のライブとして再現しているよう。 演じられるのはブルジョワの平凡な日常生活。 題材と表現手法の関係は興味深かったけれども、眠気を感じたのも確かだ。 そんな状況が、いきなり急転して、絶叫のような大音響とともに 回る花が巨大な覗きカラクリのようなものが舞台に登場する。 それが過ぎると舞台装置も役者も一気に年が20年程経ったかのようになり、 演技もシュールで表現的になるという。 平凡の日常の中に潜む「煉獄」という意味では分からないではないし、 テイストに違いはあるけれども、そのスタイリッシュな所なども David Lynch と共通する所もあるとも思った。 しかし、InfernoParadiso との作風があまりに違い、三部作という程の関連性も掴めなかった。 通して見終わって、なんとも釈然としない、不完全燃焼感が残ってしまった三部作だった。