Compagnie des Quidams はフランス・ローヌ=アルプ地方 (Rhône-Alpes, FR) を 拠点に活動するスティルトによる野外パフォーマンスのカンパニーだ。 六本木アートナイト2010の六本木広域プログラムの一つとして、 東京ミッドダウン、新国立美術館、六本木ヒルズアリーナ の三カ所でパフォーマンスを繰り広げた。 1997年に Inko'Nito と共作した Rêve d’Herbert は、 大道芸ワールドカップ in 静岡 2001 でも上演している。 実際、ウォーキングアクトは別として、パフォーマンスエリアでのバルーンを使ったパフォーマンスは 静岡で観たものとほぼ同じ。 2001年に静岡で観て以来10年近く経つので演出も変わっているのではないかと期待していたので、 その点は残念だった。 とはいえ、光る白いバルーンと丸っこく膨らむ衣装という造形も可愛らしいパフォーマンスは 充分に楽しかった。
Rêve d’Herbert の一番の魅力は、 空気を使って膨らます球状の頭を持つ丸っこい真っ白な衣装。 それも内側から光るようになっており、夜の暗闇の中に浮かび上がるようになっている。 スティルトでゆっくり歩くその姿は、大きいながら可愛らしい白いお化けのよう。 さらに、光る真っ白なバルーンをクラゲのように浮かべて揺れ動かすパフォーマンスも見せる。 大きく膨らむ衣装を着ていることもあって、スティルトの動きはあまり激しくなく、 歩き回るのがメインで、時折、身体をゆっくり揺らしたり回転するような動きを見せる程度。 しかし、その動きのぎこちなさも、まるっこいシェイプの衣装に合って、可愛らしく感じられる。 動きというより造形が魅力のパフォーマンスだ。
東京ミッドタウンのパフォーマンスエリアは芝生の庭に設けられており、 静岡での会場だった青葉公園同様、照明も遠く少なく、頭上には空が広がっている。 そういう場では、暗い中に白い姿がくっきり浮かび上がるし、バルーンも空を背景に高く感じられる。 そういった空間が、そんなコントラストと広がりのある幻想的なイメージを作り出していた。
一方、六本木ヒルズアリーナの空間は、 ビルの合間の空間で照明を落としても明さが残り、高いとはいえ屋根も付いている。 光って浮かび上がる幻想的なイメージという点で、東京ミッドタウンの庭より劣った。 六本木ヒルズアリーナでは照明や屋根を生かして、 東京ミッドタウンと 異なる演出をするのではないかと期待していたので、 ほとんど同じ内容だったのは残念だった。
新国立美術館前ではバルーンを用いず、 Rêve d’Herbert の体を膨らませた姿でのウォーキングアクト。 この方が身近に迫っての動きもあるし、観客の反応も大きい。 ウォーキングアクトのパフォーマンスを初めて観たということもあると思うが、 今回の六本木のパフォーマンスの中で最も楽しんだのが、この、新国立美術館前だった。 東京ミッドタウンと六本木ヒルズアリーナでも、パフォーマンスゾーンに到達する前30分程 ウォーキングアクトをしていたが、衣装は膨らまさなかった。 人の多いショッピングモールの中なので仕方ないとは思うが、少々残念だ。 ただし、自分が観ていない深夜の 東京ミッドタウン でのウォーキングアクトでは、 その時は体を膨らませていたのかもしれない。