8月末、26日(木)から29日(日)の4日間、原美術館を会場にして、 アップリンクの 浅井 隆 のディレクションによる映像、音楽、パフォーマンスからなるイベント 『BLANK MUSEUM』が開催された。 その3日目、『LOOKING FOR THE SHEEP day1』を観てきた。 原美術館は展覧会会期外で、一部の常設展示を覗いて、ギャラリーに展示は無し。 そんなギャラリーで上演するものもあったが、 中庭の芝生を客席にし、芝生の中やカフェ、建物の屋上等を舞台に、 音楽のライブ演奏と、ダンス・演劇の上演を、映像のプロジェクション等を交えつつ交互に進めるような進行だった。 正直、イベントというかフェスティバルならではの緩さも感じたときもあったけれども、 日暮れ後には爽やかな風が吹くような天気にも恵まれ、 原美術館の空間の雰囲気の良さもあって、ゆったり気分で楽しむことができた。
最も良かったのは、伊東 篤宏 + 山川 冬樹。 脈動するように響く電子音 (それとも 山川 の心拍をピックアップしていたのだろうか) や電子ノイズ、 庭の中でパフォーマンスを始めやがて屋上へ上がって縁に座って演奏した 山川 冬樹 の馬頭琴やホーメイの響きに同期するかのように、 夕闇の原美術館の屋上で伊東 篤宏 のオプトロンや蛍光灯が瞬いていた。 そして、日暮れ時の刻々と闇を濃くしていく様子すら演奏の一部のようだった。
続く 飴屋法水たち「馬」も、人の動きの面白さではなく、 芝生や屋上などの演技者の立ち位置や音響の使い方で、セリフや音を立体的に聴かせた。 パフォーマンスというよりインスタレーションに近い要素も感じ、そこが面白かった。 Port B 『荒地』が演劇的インスタレーションというならば、 こちらは インスタレーション的演劇、とでもいいたくなるような所があった。
最後の 勝井 祐二 + 迫田 悠 は、カフェがステージで、3階建ての建物壁いっぱいがスクリーン。 照明の落ちた暗い中庭の芝の上に腰を下して、 大きく映し出される泡や波紋を思わせるカラフルで液体的にゆらめく抽象的な映像を眺めながら、 強くエフェクトを聴かせたバイオリンの響きを聴くというのは、 サイケデリックに落ち着いていくよう。イベントのエンディングの余韻を楽しめた。
もちろん、山本 精一 + JOJO広重 のツインギターノイズも真夏の明るい日差しの中で美しく聴かれたし、 1階のギャラリーで映像の中で繰り広げられた 東野 祥子 の溢れ出るようでありながら操られているようでもあるダンスも悪くはなかった。
観客は多く、開演直後こそ若干の余裕があったものの、中盤からは腰を下ろした観客で中庭の芝がほぼ埋まる程。 美術館の中を使うようなパフォーマンスは観客が多過ぎて、あまり楽しめなかったのも確か。 企画上は、のぎ すみこ の「ひつじ」がナビゲータとなって回遊することになっていたようなのだが、 多くの観客も回遊して楽しむというより芝に落ち着いてしまっていた。 「ひつじ」のナビゲーションに期待していた所もあったので、それが全く機能していなかったのは残念だった。 しかし、回遊型のパフォーマンスをあの広さの空間でうまく機能させようとしたら、 観客20〜30名が限界だったかもしれない。