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Review: 『MOTアニュアル2011 —— Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 @ 東京都現代美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/04/06
東京都現代美術館
2011/02/26-05/08 (月休;3/21開,3/22休), 10:00-18:00. [ただし東日本大震災の影響で開館日・時間に変更アリ]
池内 晶子, 椛田 ちひろ, 木藤 純子, 関根 直子, 冨井 大裕, 八木 良太.

日本の新進の美術作家を紹介するアニュアルの展覧会。 今年集められた作品は、非常に限定された技法・素材でシンプルな作品を制作する作家を集めていた。 ふと、第一回の『MOTアニュアル1999 —— ひそやかなラディカリズム』 [レビュー] を連想させられる所もあり、 ミニマル・アートが何巡かして繊細になって回帰してきたかのようであり、 斬新な表現とは思わなかったけれども、こういう表現は好みということもあり、楽しめた。 ちなみに、震災の影響で、木藤 純子 の作品が一部展示中止となっていた。 観た中で興味を引かれた作家について、個別にコメント。

細い白い絹糸で作られた10m四方はあろう大きく疎な蜘蛛の巣のような構造を水平に張った 池内 晶子 「絹糸」 (2011) は、単にそのスケールや質感だけでなく、 上から観たときの糸の密度による浮かび上がる繊細な濃淡、 真横から観た時の垂れ下がった糸が作り出す立体形状の、見え方の違いも面白かった。

『Sound Sphere』 (2011) は、 発泡スチロールの球の球面全体を奇麗に覆うようにカセットテープの磁気テープを巻き付けたものを 20個程、空中に浮かすように細い台座に置いたインスタレーション。 観客はその球を手に取り、再生ヘッド、ベアリングの支え、回転するローラーの3点からなる台に置くことができる。 球はその上を回転し、磁気テープに録音された音が再生ヘッドからピックアップされノイズのような音が再生されるという仕組みだ。 その再生音がまるでボーリング玉が転がるような音であり、 ボーリング玉に似た色大きさの球と妙に合っていた。

工業生産された日用品等をほとんど手を加えずに構成した 冨井 大裕 は、 まさにミニマル・アート直系を思わせるところもあったが、 無骨な素材感を押し出した作品ではなく、 色や素材の選び方がカラフルで繊細な所に現代的なセンスを感じるところもあった。