国立新美術館による現代美術作家のアニュアルのグループ展。 去年の個展が良かった 松江 泰治 [レビュー] を目当てに観に行った。 ビデオ作品4作品は去年観た個展と同じものだったが、大判の写真作品は新作中心だった。 パンフォーカスで空中から俯瞰する風景を撮ったカラー写真2シリーズなのだが、 一つは都市を撮った8枚、もう一つは自然を中心とした8枚だった。 最も影の短くなる南中時に、北に向かって俯瞰するような角度で撮っているため、影がほとんど写っていない。 特に都市を撮ったものでは、明るく光る屋根と壁ばかり、 都市ならではの陰影や深みを感じさせないのっぺりとした画面に、 彼の写真の特異さが際立つように感じられた。 自然を撮ったシリーズでは荒涼とした乾燥地帯を撮ったものが中心。 スケール感を混乱させようという意図か、 4枚に1枚、遠景ではなく乾燥した砂地を間近で撮った写真が交えてあったが、 やはりすぐ気付くものだなあ、と。 また、このような風景写真に偶然写り込んだ人間を45cm角の正方形に切り出した “Cell” シリーズ (2007) も展示されていた。
展覧会全体として強いディレクションは特に感じられなかったが、 ポップなドローイングのような作品は無く、素材の質感を重視した作品が目立っていた。 そんな中では、白いプラスチックのストローを使って壁一面にテクスチャを作り出したり、 銀色のテープで大きな泡状の形を作りだしていた Tara Donovan の作品が少々印象に残った。