TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 田口 行弘 @ 森美術館ギャラリー1 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/05/05
田口 行弘
森美術館ギャラリー1
2011/3/18-7/3 (無休), 10:00-22:00 (5/3を除く火10:00-17:00)

森美術館による若手アーティスト紹介する展覧会 MAM Project の14回目で取り上げられたのは、 去年の gallery αM での Cave [レビュー] も素晴らしかった 田口 行弘。 さすがに、去年のインスタレーション程では無かったが、 彼ならではの「パフォーマティブ・インスタレーション」が楽しめた。 この「パフォーマティブ・インスタレーション」は 会期中に日々時々刻々と展示状態が変化していくインスタレーションで、 状態の変化の記録写真を繋げるとコマ撮りアニメーションにもなっている。 この変化するインスタレーションとコマ撮りアニメーションの どちらが主とも言えないような二面性が面白い作品だ。

MAM Project 014 での作品の一つ Moment: Performative Hills は、 ベルリンで制作した最初の「パフォーマティヴ・インスタレーション」作品 Moment (2007) の六本木ヒルズ版とでもいうもの。 ベルリンの Moment のビデオ (今回の展示でも上映されている) は ギャラリーの床板が街に飛び出し練り歩くようなコマ撮りアニメーションだが、 六本木ヒルズ版のものはギャラリー壁用白パネルが六本木ヒルズへ飛び出している。 この映像は面白く、撮影中の様子も観たかったな、と。 一応、展示期間中はワーク・イン・プログレスのようだが、 自分が観に行ったときは白パネルは片付けられたかのように積み上げられた状態で、 コマ撮りアニメーションの一コマを観るような感じではなかったのが残念。

ちなみに、今年1月に大阪・北浜 10W gallery で制作した Moment の ビデオも、会場で観ることができたが、 こちらは畳が大阪の街に繰り出していた。 畳が堀を渡ったり、と、こちらのビデオも面白かった。

もう一作、「倉庫」 (Lager) は ギャラリーの倉庫内でそこに置かれているものを使った「パフォーマティヴ・インスタレーション」。 Cave から影を取ったような作品でもあり、 作った構造よりも影無しだと雑然とした印象の方が強くなってしまうのが少々残念。

期待が大きかったせいか物足りなく感じたのも確かだが、 売られていた図録も充実しており、 原点とも言える Moment を観ることができ、 「パフォーマティブ・インスタレーション」を知る良い展示になっていたように思う。

田口 行弘
『Pan! Pan! Pan!』
SNAC
2011/4/9-5/8 (月祝休), 12:00-20:00 (土日11:00-19:00)

森美術館の MAM Project と同時開催の展覧会。 こちらはでは「パフォーマティブ・インスタレーション」は行っておらず、 むしろ、それ以外に焦点を当てたような展示だった。 会場の SNAC は深川資料館通り商店街の居酒屋を改装したオルナタナティブ・スペース。 改装前に使われていたとおぼしき障子や波板、合板等など 壁や天井から角度を付けて浮かしたように設置するというインスタレーション。 微妙に雑然とした感も含めて、空間的にコラージュを構成したものといった所。 そんなコラージュされたピースとして、映像作品もあった。

距離を置いて立った男女の間のポルトガル語による会話を 言葉を解しない 田口 自身が往復走って伝える様子を 男性、女性、第三者の3つの視点からそれぞれ撮影した “Contact” に 不条理なユーモアを感じた。 しかし、やはり「パフォーマティブ・インスタレーション」のコマ撮りアニメーションの方が楽しめたのも確か。 特に、撤去された「ベルリンの壁」がかつてあった場所を偲んで歩き回っているかのような “9. Nov. 2009” (2009) が良かった。

sources:

(2011/05/15 追記)