ビデオを使った作品で知られる Bill Viola の小規模な個展は、 2000年代に入ってからの額装された高精細液晶ディスプレイでスローな動画を再生する「液晶絵画」的な作品からなるもの。 5年前の大規模な個展 Hatsu-Yume (First Dream) (森美術館, 2006) [レビュー] から のバリエーションのような作品ばかりではあったが、スタイリッシュな映像が堪能できた。
最も印象に残ったのは、水のカーテンを人がくぐる様子をスローモーションで捉えたような シリーズ作品。 背景は真っ暗で、遠くにある人物像はモノクロで、暗く浮かびあがるよう。 人物像に歪みは無く水カーテン越しに撮影された映像ではない。 そこからこちらに向かって来て、激しく水飛沫をあげながら水カーテンをくぐる。 そういう点は、"The Clossing" (1996) のヴァリエーション的な作品ではある。 しかし、水の幕の手前になった所だけカラーになり、水に濡れたことと併せて、 生々しさ艶かしさが露になるように感じられるよう。
水中に女性がサバンと落ちて沈んでいくようすを水中から捉えた映像を上下反転した "Isolde's Ascension" (2005) も、聖母被昇天とまではいってはいないが、 薄い服をなびかせながら静かな舞い上がるよう。 色彩を感じさせない青い光だけの画面も静謐だ。