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Review: Jérôme Bel: The Show Must Go On @ 彩の国さいたま芸術劇場 (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/11/14
The Show Must Go On
彩の国さいたま芸術劇場
2011/11/12. 16:00-17:30.
Création: Théâtre de la Ville, 2001-02-04.
Conception et mise en scène: Jérôme Bel

昨年、Anne Teresa De Keersmaeker とコラボレーションした 3Abschied観た Jérôme Bel の2001年初演の作品を観ることができた。 3Abschied がロマン主義的なものを相対化するような作品だったのである程度予想していたけれども、 やはりダンスや舞台芸術の制度をズラすような作品だった。

上演する現地でオーディションした特にダンサーに限らない人を使っての作品で、 音楽もベタなヒット曲だけを使い、 ダンス的に訓練されていない身体を使った誰でもできる動きで構成されたパフォーマンスだ。 かといって、コミュニティ・ダンスのような社会的意味付けも指向しておらず、 超絶技法や渋い選曲や演出のセンスで魅せるよう事も避けられている。 そういったものに少々冷笑的に距離を置いていて、少々苦笑しながら観るような作品だった。

そんなユーモアのセンスは嫌いではないし、芸術の制度的な面にコンシャスであることは重要だとは思う。 しかし、この作品からは、制度にコンシャスであろうとすることが自己目的化しているような空虚さを感じたのも確かだ。 3Abschied (2010) では Anne Teresa De Keersmaeker の Mahler で作品を作りたいという意図 (それ自体フィクションかもしれないけれども) が設定されており、 その試みの上で、制度的な面 (ロマン主義的なもの) にコンシャスにならざるを得ないという説得力が感じられた。 しかし、The Show Must Go On では、そういう設定を欠いていた分だけ、 自己目的化して制度と戯れているだけのような空虚さを感じたのかもしれない。 3Abschied の前の Cédric Andrieux (2009) もダンサーの Cédric Andrieux の共作している。 そういう方が向いている作風なのかもしれないとも感じた。

3Abschied の時は ポストパフォーマンス・トークも作品の延長のような役割を持っていたので、 今回もポストパフォーマンス・トークを聴いたのだか、こちらはそれほどでは無かった。 ダンスや舞台芸術の制度に意識的であろうとするコンセプトの話よりも、 他の国で上演した際の観客の反応の違いの話の方が面白く聞くことができた。