2000年代に注目されるようになったベルリン (Berlin, DE) 在住の18組の作家を取り上げた展覧会。 ドイツ以外の国の出身者が多く、出身国は12カ国にもわたっている。 キュレータの指向に依るのかもしれないが、アイデンティティの問題を扱ったナラティヴなビデオ作品が多いという印象を受けた。 ほとんどがこの展覧会で名を知ったような作家で、全てが面白かったというわけでもないが、 それなりに興味を惹かれる作品もあった展覧会だった。 以下、気になった作家について、個別にコメント。
トルコ系の Nevin Aladağ によるビデオ作品は、 トルコの民謡をうたうドイツ在住のトルコ系の若者を捉えた “Voice Over” (2006) のようなストレートな作品より、 様々な人々の手拍子を刻む手元のみを繋いでリズムを構成した “City Language III” (2009) のような作品の方に、フォーマルなかっこよさを感じた。 建物の屋上でヘッドホンをしてその音楽に合わせて踊る女性の姿を捉えた “Raise The Roof” (2007) はちょっとありがちだとは思ったが (例えば、Jérôme Bel: The Show Must Go On [レビュー] でも似たようなことをやっていた)。
ex-Genesis のミュージシャンとは同名別人の Phil Collins はイングランド出身、 2006年に Turner Prize にノミネートされたこともあり、 The Guardian の文化欄にも時々名が挙がる作家。 この展覧会では数少ない予備知識のあった作家だった。 “The Meaning of Style” (2011) はマレーシアにおけるスキンヘッズを取り上げたビデオ作品だが、 セリフは無いもののスタイリッシュな演技・撮影・編集がされていて生々しい現場感が無く、 マレーシアにこのようなスキンヘッズがいること自体がフィクションなのではないかと感じる程。 音楽もちょっと感傷的。そして、それが面白かった。
Matthias Wermka & Mischa Leinkauf の “The Neonorange Cow” (2005) は、ベルリンの街中のあちこちにブランコをかけて漕いでいる様子を捉えたビデオ作品。 地下鉄や鉄道の線路の上とか、ハイウェイの案内看板の下とか、地下水路の上とか、 意外な所で漕いでいる様子を、ちょっと気付き辛いくらいの映像で捉えているところに、 さりげないユーモアを感じた。 タイトルやビデオの冒頭で掲げられるタイトルに関連するテキストと、 そういったブランコの映像との関係がよくわからず、腑に落ちないところもあったけれども。