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Review: 『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』 Werner Herzog (dir.): Cave of Forgotten Dreams (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2012/03/11
『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』
2010 / Canada/USA/France/Germany/UK / 90min / colour / digital 3D (1:1.85).
a film by Werner Herzog.

1994年に南フランス・アルデーシュ県 (Ardèche, FR) で発見された人類最古の洞窟壁画 (ショーヴェ洞窟壁画, Painting of Chauvet Cave) に関する3Dドキュメンタリー映画。 Neue Deutsche Film で知られた Werner Herzog が監督を手掛けているが、 その作家性を強く打ち出した作りではなく、 むしろ、History や National Geographic もしくは BBC などが制作する 科学・歴史ドキュメンタリー・テレビ番組に近い作りだった (実際、History が制作に参加している)。 題材だけに、そのような作りで良かったとも思う。 良く出来た科学・歴史ドキュメンタリーとして楽しめた映画だった。

壁画保護のために厳しく立ち入りが制限されている洞窟で、フランス政府の特別許可で撮影できた映像だ。 実際に観ることのできる可能性のほとんど無い壁画を3D映像の立体感をもって観られるというのはありがたい。 また、科学・歴史ドキュメンタリーらしく、単に洞窟壁画を美しく見せるのではなく、 このような考古学研究がどのように進められるいるのかや、 この壁画の考古学・人類史的な意義についても判るような作りになっているのも良かった。 特に興味深かったのは、 2000年代末に南ドイツで発見されたばかりの同じオーリニャック文化 (Aurignacian) に属する ホーレ・フェルス洞窟 (Hohle Fels Cave) で見つかったビーナス像や鳥の骨で作られた管楽器についても取材して、 当時 (35,000〜30,000年前) の人類の精神世界のありようにも触れている所だった。

音楽は Ernst Reijseger [関連レビュー]。 サウンドトラックは Cave Of Forgotten Dreams (Winter & Winter, 910 181-2, 2011, CD) としてCD化されている。 この音楽にも期待した観にいったのだが、映画の内容もあってか音楽は印象にあまり残らなかった。

ちなみに、オリジナルは Herzog 自身がナレーションを付けているが、 この日本上映では オダギリジョー による日本語吹替となっている。 Herzog 自身のナレーションで観てみたかったようにも思うが、 字幕では情報量も制約あるので、仕方無いだろうか。

映画館で商業的に上映される映画として3D映画を観るのは、実は初めて。 初3D映画は Wim Wenders の Pina のつもりでいたのですが、 計らずしも Herzog になってしまいました。 他の3D映画を知らないので、3Dとしての出来がどうかは判断保留ということで。 観た映画館 TOHOシネマズ六本木ヒルズ は XpanD 方式 (液晶シャッター方式) という噂をネットで目にしていましたが、 配られたメガネは偏光フィルタのものだったので RealD 方式だったようです。 偏光フィルタ・メガネがもらえたので、 Pina を観るときにも使える、と期待したのですが、 都区内の主要な映画館は XpanD 方式ばかり……。うーむ。