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Review: Ernst Reijseger: Tell Me Everything
2009/03/08
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Ernst Reijseger
Tell Me Everything
(Winter & Winter, 910 151-2, 2008, CD)
1)Bidderosa 2)Flurry 3)Wake 4)Tristan's Tune 5)Moby's Night Out 6)Falsetto 7)Dancing For D 8)Song Of Nenna 9)Tempered 10)Tiny Adventure 11)Delicato 12)Comodo Varan 13)Tell Me Everything
Recorded 2008/04/28-30 at La Commenda di Sant'Eufrosino, Volpaia, Tuscany, IT.
Ernst Reijseger (violincello).

Ernst Reijseger は1970年代から jazz/improv の文脈で活動する オランダ (Nederlands / Netherlands) の cello 奏者だ。 Clusone 3 や ICP Orchestra での活動で知られている。 そんな Reijseger が、 Colla Parte (Winter & Winter, 910 012-2, 1997, CD) 以来10余年ぶりに cello 独奏のアルバムをリリースした。 相変わらずだが、cello の響きだけでなく録音されたその場の空気感も味わえる。 聴いていて落ち着く作品だ。

Colla Parte は イタリア・ロンバルディア州ミラノ (Milan, Lombardia, IT) の近く Briosco にある 17世紀に建てられた別荘邸宅 Villa Medici-Giulini で録音されていた。 今作で録音場所として選ばれたのは、イタリア・トスカーナ州フィレンツェ (Firenze, Toscana, IT) の南 Volpaia にある 15世紀に建てられた教会 La Commenda di Sant'Eufrosino だ。 "no processing" のようなクレジットは無いが、 少くとも cello の演奏については多重録音や編集は行っていないように聴こえる。 小鳥のさえずりが聴こえる所もあるが、 録音場所からして、演奏と一緒に録音したように思われる。

口笛吹きつつピッツィカートする cello も軽快な 南アフリカ風の “Dancing For D” (D は Dollar Brand だろうか) のような曲もあるが、 Colla Parte の “Gwidza” (Dollar Brand) や “La Madre Di Tutte Le Guerre” (Misha Mengelberg) で聴かれたような軽快な展開は多くない。 かといって、プリペアドなどの特殊な奏法を駆使しているわけでもない。 弦の擦れる音、弾ける音、そして、胴の鳴りを その微かな響きを含めて楽しむような録音だ。 ラストの表題曲 “Tell Me Everything” の 細かく刻むアルコ弾きでうねりを作りだすような演奏は、 彼のテーマとも言える “Colla Parte” の変奏のようだ。

Clusone 3 や ICP を辞めた後、2000年代に入ってからも、 Reijseger は主に Winter & Winter を中心にリリースしてきている。 2000年代後半だけでも、 George Graewe (piano)、Gerry Hemmingway (drums) との free/improv trio での Continuum (Winter & Winter, 910 118-2, 2006, CD)、 古楽器 viole の4tet Il Suonar Parlante と共演して Renaissance 期の classical を演った Vittorio Ghielmi: Full Of Colour (Winter & Winter, 910 119-2, 2006, CD)、 サルデーニャ (Sardegna, IT) のテノーレ節 (canto a tenore) のグループ Tenore e Cuncordu de Orosei と セネガル (Senegal) 出身のミュージシャン Mola Sylla と再共演しての Werner Herzog の映画へのサウンドトラック集 Requiem For A Dying Planet (Winter & Winter, 910 127-2, 2006, CD)、 classical の文脈のミュージシャン Larissa Groeneveld (cello)、Frank van de Laar (piano) との共演 Do You Still (Winter & Winter, 910 136, 2007, CD) がある。その音楽性の幅も広くいずれも悪くはないのだが、 この最新のソロ Tell Me Everything が Reijseger の演奏が最も楽しめるだろう。 ちなみに、Reijseger がサイドメンとして参加した Winter & Winter 以外からのリリースでお薦めは、 ノルウェー (Norway) の bass 奏者 Mats Eilertsen の4tet の2作、 Turanga (AIM, AIMCD108, 2004, CD) と Flux (AIM, AIMCD123, 2006, CD)。 Clusone 3 にも繋がるような jazz/improv が楽しめるだろう。