ミニマルさとナンセンス・ユーモアを併せ持つビデオ作品を作成するイギリスの2人組 John Wood & Paul Harrison の2011年の作品。 以前から好きな作家だが、相変わらずのセンスの作品が楽しめた。
“10 × 10” は、 ガラス張りの下りエレベーターに乗って観ているかのように、 1場面あたり数秒の102の場面を上下方向のワイプで切り替えて見せて行く作品だ。 102の場面は全て独立というわけではなく、最初と最後の2場面が組になっており、 残りの100場面も、10の部屋それぞれの場面シリーズ10場面分となっている。 その部屋の様子というのは、ビジネススーツの男が様々なパフォーマンスを広げたり、 事務用のプラスチックをいろいろな形に並べたものだったり。 部屋の奥の壁にコミックから切り出した擬音語の漫符の額絵が掲げられており、 その手前でその音の結果を思わせるように男が倒れていたり、 部屋の中で脚立や棚を動かすたびに蛍光灯を割ってしまうような動きをしたり。
102場面の多くで、1場面ごとにオチが作られている。 画面は上へ上へとワイプしていくわけだが、 場面ごと最初に部屋の奥の壁が見えてそれから次第に部屋の手前の様子が見えてくる。 その視野の変化を使って、最初に部屋の奥の壁で額絵やプロジェクタのを見せたり男の動きを見せて、 最後に手前の床の上にそのオチとでもいう状態を見せてくる。 わかりやすく笑わせるようなオチではないが、 「なるほどそうきたか」と思わせるようなものテンポ良く見せていく。 そのリズム感に思わず見続けさせられることろがある。
もちろん、1部屋あたり10場面を使っての展開らしきものも無いわけではないが、 それはむしろナンセンスで不条理感すら感じさせるもの。 こぎれいなオフィスで繰り広げられる 不毛で空虚なビジネスマンの仕事を見せ付けられるよう。 テンポ良い場面切替で観るものを引きつけつつ、全体として不条理感を強く感じさせる、 そんなバランスも絶妙な作品だった。