現在のブラジルの写真・映像作家のグループ展。 スナップ風に街の光景を切り取ったのもとも、かっちり風景を撮ったものとも違う、 デジタル処理を含めて様々な加工をしたものが中心。 民俗的なモチーフを撮ったものも少なくないのだけれども、 それをライヴな感じで捉えたものとも、一歩引いた記録写真のように捉えたものでもなく、 むしろ、都会的な goth 的なセンスでグラフィカルに捉え直したかのよう。 Kenji Ota や Eustáquio Neves の彩度を落した版画 (銅版かシルクスクリーン) のような質感や、 Luis Braga の超現実的な人工的色彩感が、特に印象に残った。 現代美術というよりグラフィック・デザインに寄った表現に感じられたが、これは資生堂ギャラリーの性格だろうか。
『ブラジル:ボディ・ノスタルジア ― 9人の作家による現代美術展』 (東京国立近代美術館, 2004) [レビュー] を観たときに、Miguel Rio Branco の写真から グラフィック・デザイン・チーム 23 Envelop (1980年代の 4AD レーベルのデザインを手掛けていた) や Russell Mills を連想させられた。 この展覧会には Miguel Rio Branco は参加していないが、 展示されていた写真の多くも、そういうデザインで好んで使われそう。 このような作風の写真がブラジルの現代の写真の中でどの程度を占めているものかわからないが、 goth 的なセンスが根強くあるのだなと感じられた展覧会だった。