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Review: 『日本・オブジェ 1920-70年代 断章』 @ うらわ美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/1/7
うらわ美術館
2012/11/17-2013/01/20 (月休; 12/24,1/14開; 12/25,12/27-1/4,1/15休)
村山 知義, 柳瀬 正夢, 山上 嘉吉, 中上 岩太, 瑛 九, 杉田 禾堂, 小原 豊雲, 勅使河原 蒼風, 井上 有一, 村岡 三郎, 赤瀬川 源平, 北園 克衛, 新国 誠一, 李 禹煥, etc.

1920sの新興美術から1960sの前衛的な美術を経て1970sのもの派まで、 オブジェという観点から日本の美術を追った展覧会。 また、狭義の美術 (fine art) だけでなく、 工芸、いけばな、書、詩といったジャンルまで範囲を広げている。 「断章」と銘打たれているようにはっきりと系譜付けられた展示ではなかったけれども、 その点も含めて、 絵画や彫刻といった表現様式のメインストリームから外れたオブジェ的な表現を通して、 表現の試行錯誤を見るような面白さがあった。

この展覧会における「オブジェ」を定義するかのような「I. デュシャンと瀧口修三」に続いて、 「II. 新興美術運動とシュルレアリズム」では主に戦前の動きを紹介していた。 いわゆるシュルレアリズム的なオブジェだけでなく、 村山 知義 の『コンスタラクチオン』 (実物が残っていないので写真だったけれども) のような構成主義的なものや、 中山 岩太 のような新興写真まで含めていたのが良かった。

「III. オブジェの拡張」では、杉田 禾堂 「用途を指示せぬ美の創案」 (1930) に始まり 戦後の前衛的な いけばな や 書 の運動を追うもの。 写真での展示だったけれども、戦後の前衛いけばな運動をリードした 勅使河原 蒼風 と 小原 豊雲 に関する展示が迫力あった。 前衛的な書にしてもそうだけれども、造形がシュルレアリズムに親和的で、違和感は無かった。

「IV. オブジェの氾濫」は戦後の美術におけるオブジェのコーナーだが、主に1960sのもので、1950sが手薄に感じられた。 (東京国立近代美術館の展覧会 『実験場1950s』 [レビュー] と被ったせいだろうか。) そんな中では、シュルレアリズムの系譜に連なるような作品よりも、 赤瀬川 原平 「千円札裁判押収品目録」 (1969) と併せて展示されていた当時の裁判に関する新聞・雑誌記事が当時の雰囲気を感じさせて面白かった。

続く「V. 詩とオブジェ」では、戦後のコンクリート・ポエトリーを中心とした展示で、 これだけで1コーナー作れる所に、アートをめぐる本の美術館でもある うらわ美術館 らしさを感じた。 北園 克衛プラスチック・ポエム、機関誌『VOU』や、新国 誠一 の ASA など。

そして、しめくくり「VI. オブジェ思想の超克へ」は1970sの もの派。 展示作品の点数も少なかったし、むしろ、ここで展覧会が終っているという所が興味深かった。 ポストモダンな1980年代の前に終るため、 モダニズムの一面としてのオブジェ思想 (タイトルでも暗示されている) として うまくまとまったように感じられた。