10年前に『府中ビエンナーレ』という展覧会が開催されていたのだが、 時期的にも内容的にもそれを承けているかのような内容の展覧会。 1990年代以降に活動を始めたような比較的若い世代の作家のグループ展だ。 Fluxus の 塩見 允枝子 の作品は展覧会の方向を示すような形で展示されていたが、 強い方向性はそれほど感じなかった。 以前にも観たことのある作家が半数近くを占めていたせいもあると思うが、 2000年代以降の流行との距離を置いた感もあって、 とても良かったという程でも無いのだが、観ていてそれなりにしっくりくる展覧会だった。
一番良かったのは、mamoru による、 日常の中の微かな音に耳を傾けさせるインストラクション付きのインスタレーション。 丸めた紙が水を吸って皺が伸びようとして立てる音、 氷が溶けて垂れる水滴が立てる音、 空のペットボトルが風を受けて立てる低い音、 そして、アルミのハンガーが風で揺れて触れ合う音、など。 思わず聴き入ってしまうところがあったし、 氷やハンガーやのインスタレーションでは、音だけでなく微かな動きも伴う所が良かった。
三田村 光土里 は、以前に観た Art & Breakfast [レビュー] の延長とでもいうインスタレーション。 といっても、観客と朝食するという部分は感じられなかったのだが。 以前に観たときより、インスタレーションの合間に忍ばされている言葉に引っ掛かりを感じた。
斎藤 ちさと の「シリーズ気泡」は、以前に 『アーティスト・ファイル2010』で観たときは、 (よくある雨滴ごしの写真のヴァリエーションかな、という感じでピンとこなかった。 しかし、今回、気泡にピントが合った写真を見て、 気泡に小さく見える風景とピンぼけした背景の対比に気付いて、それが面白く感じられた。