江戸時代に完成した日本独自のマジック「手妻」。 TV等で観る機会はあったのですが、藤山 新太郎 『手妻のはなし』 (新潮選書, 2009) [読書メモ] を読んで以来、一度は生で観てみたいと思っていたのでした。 公演情報はそれなりにチェックしていたのですが、なかなか都合が合わず、2年近く経ってしまったのですが。
会場の 神田の家 は、江戸時代から続く材木商が昭和2年に建てた 木造の豪邸を神田明神隣の宮本公園してに移築保存したもの。 その20畳程度のお座敷を使って、観客も十名余り. 多くの演目は録音の音楽を使っていましたが、 ハイライトと言える演目「蝶のたわむれ」では 塩高 和之 の 薩摩琵琶 の生演奏を伴奏に演じました。 また、薩摩琵琶も単に伴奏するだけでなく、『平家物語』冒頭の祇園精舎の下りも。 最後は「なすとかぼちゃ」という幇間の踊りで締めるなど、 寄席の色物というより座敷芸を意識した構成・演出で1時間余。 客と話しをしながら進めるなど、こぢんまりと親密な雰囲気での パフォーマンスを楽しむことができました。
やはり、一番の見所は、蝶を象った紙の切れ端を扇で煽って飛ばすだけでなく、 それで蝶の一生を描く「蝶のたわむれ」。 生で観ていると、一生を描いているのにあっという間に終ってしまう、その濃密な儚さを感じました。 面白さといえば、砂を入れただけの笊に種を入れてあっと言う間に瓜をならせる「植瓜術」。 弟子の 大樹 とのかけあいで進めて行くのですが、 そのテンポが江戸大神楽などにも近い微妙にまったりしたのもなのも、ツボにはまりました。
江戸手妻は奇術の不思議さを派手に見せるようなことが無く、 いろいろ型があったりと奇術的な面以外の芸も細かい所が、面白いです。 そして、そういう芸に 神田の家 のお座敷という空間が合っていました。 月1〜2回程度の頻度で開催されているので、これからも時々観に行ってもいいかなあ、と。