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Review: 『カリフォルニア・デザイン 1930-1965 “モダン・リヴィングの起源”』 (California Design, 1930-1965: “Living in a Modern Way”) @ 国立新美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/03/31

戦間期から20世紀半ばにかけてアメリカ西海岸カリフォルニアから発信された プロダクトデザイン、グラフィックデザインからファッションまで、モダン・デザインを辿る Los Angeles County Museum of Art (ロサンジェルス・カウンティ美術館) 企画の展覧会。 カリフォルニア・デザインという括りで今まで意識したことは無かったけれども、 いわゆるミッドセンチュリー・モダンと言われるものの多くがここに含まれていた。 そいういう意味で、こんなデザインがあったのかと新鮮に観るというより、 なるほどこういうデザインはこのように位置づけられるものなのか気付かされた展覧会だった。

展示の中で一番のビックネームは Charles & Ray Eames で、特に前半、 彼に関するものに展示が多く割かれていた。 Eames は以前に観た展覧会 [レビュー] などを通して ある程度知っていたけれども、ロサンジェルスを拠点にしており、 その地の航空・軍事産業の技術の民生化という面もあったことに、この展覧会で気付かされた。 展示点数は少ないけれども、彼のデザインのデザイン史上の位置づけや意義は、 今回の展覧会のほうが捉え易かった。

他には映画ポスターやレコードジャケットでも知られる Saul Bass も目立っていた。 Saul Bass というと Alfred Hitchkock の映画、 特に Vertigo (1958) という印象が強かったのだけれど、 今回の展示では Anatomy of a Murder (Otto Preminger (dir.), 1957) 関連の資料を中心に展示を作ってあった。

そして、Eames や Bass はもちろん、Alvin Lustig などが関わり、 1929年から1967年にかけてロサンジェルスで発行された雑誌 Arts & Architecture (1940年までは California Arts & Architecture)。 この雑誌の発行期間とこの展覧会で対象とした期間がほぼ同じなのは偶然ではないだろう。 戦間期のヨーロッパ・アヴァンギャルドのような確固たるマニフェストの下での運動ではないけれども、 この雑誌を核にした緩やかなデザイン運動という感もあった。 もちろん、それ以外のデザイナーも取り上げられていたけれども、 サンフランシスコよりロサンジェルスの方がこの時代のデザインの発信地として強力だったのだろうか。

今回の展覧会全体を通して感じたのは、戦間期モダニズムとミッドセンチュリー・モダンの連続性。 特にヨーロッパでは第二次世界大戦の戦場になったこともあって、 その間に不連続面を感じることが多い。 しかし、戦間期と戦後はアメリカ、特にカリフォルニアを経由して繋がっていたのかな、と。 展示されていた1930s-40sの作品は遅れて来た戦間期モダニズム、というか、 そこまで厳格ではない消費主義的な面もあるアール・デコかという雰囲気なのだが、 そういう消費主義的な面や曲線・流線型使いなどがそのままミッドセンチュリー・モダンへと繋がっていくよう。 確かに第二次世界大戦前と戦後ではかなり雰囲気が異なるのだけれども、 その分水嶺ともいえるようなデザイン面での画期のようなものも展示の中で見付けられず、 むしろ連続していたのかな、と、感じさせる展覧会だった。