自作の前で作家自身が自作について語るアーティスト・トークを、 東京国立近代美術美術館では2005年以降コレクション展で行っています。 そのトークのビデオ上映をしつつ対応する作品を展示する展覧会です。 たまにやっている所に出くわしたことはありましたが、 アーティスト・トークにあまり興味が持てないので、ちゃんと聴いたことはなし。 この展覧会もあまり期待していませんでした。 しかし、最近の抽象と具象の間の良質な平面作品が集められており、その展覧会として楽しめました。
去年の 柴田 敏雄 との2人展示も良かった 辰野 登恵子 [レビュー]。 そして、秋岡 美帆、児玉 靖枝 に 日高 理恵子。 この3人で一つのコーナーになっていたのですが、 樹をモチーフとしている所など共通点のある作品が並置されることにより、むしろ、差異が際立つよう。 光の動きを描く 秋岡 に、むしろ静かに透ける光に包まれるような 児玉、 逆にくっきり細かい枝まで描くことにより抽象に突き抜ける 日高 と、 アプローチの多様さを楽しめました。
ビデオを見ている時間はありませんでしたが、要点を抜粋して文字起こしした小冊子配っており、 合間にそれを読みつつ観ることができました。 コンセプチャルというより形式的な絵画についての語りだったので、 トークの内容も作品の間に程よい距離を感じました。
目当てはむしろこちらの展覧会だったのですが、こちらはピンときませんでした。 もっと形式的な感じの「サイトグラッフィッス」的な写真や風景画が多いのかと予想してたのですが。 1950-60s高度成長期時代や1960-70sアングラ的な資料と交えて、逆に散漫に。 それでも、縦長の画面の真ん中を渋谷川の擁壁の最上ラインで切った 畠山 直哉 の 『川の連作』 シリーズ (1993-96) は何時観ても見応えあるし、 ほとんどホワイトアウトした画面の下辺ぎりぎりに都市のスカイラインを僅かに捉えた 勝又 公仁彦 『Skyline』 シリーズ (2003) も良かった。