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Review: Teater Studio Indonesia / Nandang Aradea: Overdose: Psycho-Catastrophe @ 池袋西口公園野外劇場 (パフォーマンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2013/11/11
Teater Studio Indonesia / Nandang Aradea
Overdose: Psycho-Catastrophe
池袋西口公園野外劇場
2012/11/09, 18:30-19:30.
Direction: Nandang Aradea; Stage Design: Otong Durahim; Sound Design, Video Operation: Enry Johan Jaohari.
Cast: Otong Durahim, Godi Suwarna, Hendra Setiawan, Mabsuti, Ade Il Syarifuddin.

インドネシア・バンテン州セラング (Serang, Banten, Indonesia) を拠点に活動するカンパニー Teater Studio Indonesia が、去年に続いて今年も池袋西口公園で野外パフォーマンスを繰り広げた。 それも、今回は FESTIVAL/TOKYO 2013 の委嘱作品だ。 Emergency: The Bionarration of a Disjointed Body [レビュー] のような派手な造形の変形が無いせいか、 去年観たときほどのインパクトはさすがに無かったが、 竹で組まれた縦奥行き高さそれぞれ10m近くあろう櫓状の構造物を使った ダイナミックでフィジカルな表現が楽しめた。

パンフレットによると、この作品は、スンダ海峡の火山クラカタウ (Krakatau) の1883年の噴火を 民間伝承やオランダ植民地政府の資料、バンテン (Banten) 族の神話などを通して読み解く中で生まれた作品という。 しかし、火山噴火やそれに伴う大災害、それに見舞われた人々の心理などを直接描いたものではない。 全体的に儀式的な雰囲気の強いパフォーマンスなのだが、 櫓を上り下りして動き回るその動き自体が、 天災に右往左往し、英雄的な振る舞い、災害が収まることを祈り被害者を弔う人々の暗喩のよう。 その動きはダイナミックで高さもあるのでスリリング。 途中手を滑らしたか中層から落下した人が出たときはどうなるかと思ったが、 落ちた張られたネットが緩衝となったか、特に怪我を感じさせずにパフォーマンスを続けていた。 大した事が無くて良かった、と。

櫓の中に吊るされた巨大な流木のようなものが動きの中で主要な役割を担っていて、 櫓からそれに飛び移ったりぶら下がったり、穿たれた穴に竹竿を差したり、ロープで固定したり振り回したり。 櫓脇に作られた祈りの場のような所に置かれた銅鑼を突く鎚にもなれば、 その上にパフォーマーが乗って舟のように使われるときも。 派手に変形するものでも無かったので、そのような見立てがもっと活用されていたら、と 少々物足りなく感じる所もあった。

このカンパニーを主催し今回の作品を構想・演出した Nandang Aradea が 公演直前の10月12日に病で倒れ急死していたこをと、パンフレットで知った。 今回は追悼公演的な意味合いもあったのだろうか。R.I.P.