映像と組合わせでコミカルな舞台を作ることで知られる José Montalvo の演出による、 Cervantes による17世紀スペインの小説、というより、 それに基づくクラシック・バレエ作品 (音楽 Léon Minkus、振付 Marius Petipa) を 現代のフランス・パリ (特にそのメトロ) に舞台を置き換えての作品。 タイトルにある Trocadéro は、Théâtre National de Chaillot の最寄のメトロ駅だ。
street dance / hip hop dance や flamenco のダンスも多く取入れ、 男性ダンサーのいでたちもパリの低所得層風のジャージ姿だが、 女性ダンサーを中心に Petipa のクラシカルな ballet の動きももふんだんに盛り込んでいた。 もちろん充分に鍛えられた身体と技術を持つダンサーということもあると思うが、 street dance のリズムで ballet 的な動きをどんどん決めていくところなど、とても美しくシャーブ。 hip hop 等のダンスの場面よりも ballet の動きの方に見応えを感じた。
映像等も駆使した演出で、クラシック・バレエの作品を現代にコミカルに置き換えた作品というと、今年の4月にも The Love Show: Nutcracker: Rated R [レビュー] を観ている。 ユーモアのセンスに違いはあるものの、 オリジナルの作品の踏まえ方といい、現代の都市の風俗ネタの盛り込み方といい、 とても近いものを感じたのも確か。 The Love Show: Nutcracker: Rated R の方が 少々サブカルチャー色濃く感じられたのは、 ニューヨークとパリのセンスの違いというのもあるかもしれないが、 Théâtre National de Chaillot という劇場の色かもしれない。
しかし、自分にとっては、Nutcracker と比べて Don Quichotte はオリジナルに疎く、 ニューヨークに比べてパリの方が地名から土地柄を想起し難い。 そういう所が判るともっと楽しめるのだろうなあ、と、思いながら観ていた。 そんな不完全燃焼感もあったものの、 良く出来た大人向けエンタテインメントとして充分楽しめた舞台だった。