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Review: 『かたちとシミュレーション —— 北代省三の写真と実験』 @ 川崎市岡本太郎美術館 (写真展・デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/01/12
『かたちとシミュレーション —— 北代省三の写真と実験』
Form and Simulation: Experiment & Photography of Kiadai Shozo
川崎市岡本太郎美術館
2013/10/19-2014/01/13 (月休;11/4,12/23,1/13開;11/5,12/24,12/29-1/3休), 9:30-17:00.

1950年代に実験工房のメンバーとして活動を始め、 美術、写真、模型等の分野で活動した作家、北代 省三 の回顧展。 『現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く』 (神奈川県立近代美術館, 2013) [レビュー] などでその活動の一面を観たことがあったが、まとめて観たのはこれが初めて。 実験工房での『APN』や1960s年代のモダンなデザインを展開した『グラフィック集団』等での商業写真の仕事も好みだけれども、 むしろそれ以外の活動の方が興味深く観ることができた。

特に1956-58年に撮影され、今回初公開だという写真連作『かたち』『樹』『自動車についての美学』は、 大胆なフレーミングやクロースアップで造形の面白さを抽象画のように切り出しているだけでなく、 ディテーィルの美しさも引き出す撮影とプリント。 写真作品としての完成度はむしろこの頃が最高にも感じられた。

技術者上がりというバックグラウンドが強く出るのは、むしろ1960s後半から。 『アサヒカメラ』に1967年に連載した「未知のビジョン」での、ストロボ撮影や高速度撮影など、 撮影技術という点でも記録する現象への関心という点でも、技術者的なセンスを強く感じさせる。 また、1970s以降の模型評論家としての仕事にしても、 模型本体だけでなくその原理説明のための流体の可視化のための装置などを自作しており、 器用さと手の早さを感じさせるものだった。

ただ、空への憧れがあったとのことで、空撮用ラジコン飛行機まで作っていたのに、 空撮写真があまり展示されていなかったのは意外だった。 当時のラジコン飛行機では満足にコントロールの効いた写真が撮れなかったということなのだろうか。 しかし、1960sの商業写真にしてもクローズアップ写真をむしろ得意にしていたようで、 それが空撮写真とは合わなかったのだろうかとも思った。