フランスの L'École Supérieure Nationale des Arts de la Marionnette (国立高等人形劇芸術学院) 出身の Gisèle Vienne と Etienne Bideau-Rey による2001年のダンス作品を、 フランスにある5つの国立バレエ団の1つ、 ロレーヌ地方の主要都市ナンシー (Nancy) に拠点を持つ Ballet de Lorraine のために再制作したもの。 Vienne の作品は2010年に This is how you will disappear 『こうしておまえは消え去る』を観たことがあるが、 身体表現的な面の薄いものだった [レビュー]。 そんな Vienne がバレエ団と組むとどんな舞台になるのかという興味で、観てみた。
女性ファッションのディスプレイに用いられる「マネキン」をテーマとしているので、 ストリート・ダンスにおけるロボット・ダンスやマイムにおけるリヴィング・スタチューの技をもっと使うかと予想していた。 しかし、そうではなく、女性マネキンによく見られる類型的なポーズに着想したダンスだった。 歩き方も、むしろ、ファッションショーのモデルのキャットウォークのようで、 その中のポーズがマネキン的により大袈裟で不自然になったよう。 人形のように重力に従って崩れ落ちたりもするが、マイムのように崩れ落ちる様を自然に演技するというより、 そういう動きから発想して床上をのたうちまわるような動きだった。 フランスでもトップクラスのバレエ団のダンサーだけに、マネキン的なポーズやキャットウォークも実に綺麗。 Rehberg の耳障りな電子音響、グロテスクな面、不自然な動きの繋ぎや崩れ落ちる動きなどで、 その動きは異化されるのだけれども、それでも思わず見とれてしまうものがあった。
舞台にはそんな女性ダンサーが6名と、それらに恋し翻弄される役の男性ダンサー1名。 男性ダンサーは、最初は女性ダンサーを取っ替え引っ替えロマンチックな雰囲気になるも、だんだんコントロールが効かなくなり、 自分も女性マネキンにすがたを変えて、他のマネキンの中にとけこんでしまうという、ミイラ取りがミイラとなるような話。 次第にマネキン達のコントロールが効かなくなる様など面白く観ていたが、 Tujiko Noriko が歌うたどたどしい日本語の歌に合わせて 歌うかのように金髪のカーリーな長髪ウィッグを付けた女性がマイクに向かう場面や、 人形のような女性を好きになる男性の末路とか、その意図を掴み損ねたのも確か。 そのため、見終わった後、どうも釈然としない気分になってしまった。