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Review: Gisèle Vienne: This is how you will disappear @ にしすがも創造舎 (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/10/31
『こうしておまえは消え去る』
にしすがも創造舎
2010/10/30. 19:30-21:00.
First production: Festival d'Avignon, 2010/07/08-15.
Conception, direction, choregraphy & scenography: Gisèle Vienne
Music written by, live performance and diffusion: Stephen O’Malley and Peter Rehberg. Text and song lyrics: Dennis Cooper. Light: Patrick Riou. Fog sculpture: Fujiko Nakaya. Video: Shiro Takatani.
Performed by and created in collaboration with: Jonathan Capdevielle, Margrét Sara Gudjónsdóttir and Jonathan Schatz.

Gisèle Vienne はフランス出身の振付家/演出家。 といっても、作風等の予備知識はほとんど無く、むしろ、 中谷 芙二子 の霧の彫刻 [写真@横浜トリエンナーレ2008] や、 高谷 史郎 (Dumb Type) の映像、Peter Rehberg (MIMEO) らによる音楽がどう使われているのか、 という興味で観に行った。 (もちろん、今年の Festival d'Avignon で初演されている作品というのもあったが。) しかし、予想以上に、パフォーマーよりも、 霧の彫刻 や照明、O’Malley & Rehberg による電子音響の作り出す雰囲気が主役とも言える 舞台作品だった。

舞台の上には疎らな林の中のような空間がそれなりにリアルに再現されており、そこに 霧 が漂っている。 照明は暗めで、木漏れ日のように落ち葉が敷き詰められた地面を照らしていた。 そんな中で練習する体操の女性選手と男性コーチ、 そして、ガールフレンドを殺してしまったというロックミュージシャンとの出会い。 その出会いから表面化する不安や葛藤などの登場人物の内面が、出演者のセリフや身振りではなく、 霧の濃淡の変化や落ちる照明の変化、そして、鳴り響く電子音響のテクスチャの変化やふっと差し込まれる歌 によって作られる場の雰囲気によって表現されていた。 霧深い林の中での殺人事件現場への遭遇という悪夢的なイメージを見せ付けられたような1時間半だった。 出演者自身がセリフを喋るのではなくナレーションによって添えられという所も、 内面が演者の中から湧き出てくるというより、場の雰囲気として作られているように感じた一因だ。 また、この演者と話者の分離に、Vienne の人形劇というバックグラウンドも感じた。 高谷 の映像は林のテクスチャに埋もれてしまっていて、残念ながらほとんど印象に残らなかった。

場面転換にも暗転の代わりに霧が使われた。舞台上を霧で満たすだけでなく、客席を含めて霧で満たしていた。 霧で隠れる様子を客観的に見るのではなく、自身が霧に包まれるということにより、より強く場の雰囲気の変化を感じたように思う。 特に、キャンプ地での痴話喧嘩の果てのロックミュージシャンの殺人現場に出くわす女性体操選手、のような場面を 濃霧の合間に浮かび上がらせるような使い方が気にいった。

映像的にすら感じる作り込んだ舞台、内面を感じさせないようなパフォーマーの振る舞い、 時に圧迫的にすらか感じるときもある電子音響使いなどから、去年観た Romeo Castellucci / Socìetas Raffaello Sanzio: Divina Commedia. Purgatorio (『神曲 — 煉獄編』) [レビュー] も連想させられた。 そして、身体表現というのとはまた違う、空間演出的な舞台表現というのも確かにあるな、 なんて思った舞台でもあった。