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Review: Leandro Erlich: The Ordinary? @ 金沢21世紀美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/06/02
The Ordinary?
レアンドロ・エルリッヒ 『ありきたりの?』
金沢21世紀美術館
2014/05/03-08/31 (月休; 5/5, 7/21, 8/11開; 5/7, 7/22休), 10:00-18:00 (金土-20:00).

Leandro Erlich は1990年代に活動を始めたアルゼンチンはブエノスアイレスを拠点とする現代美術作家。 金沢21世紀美術館常設の “The Swimming Pool” (2003) をはじめ、 2000年代以降の国内の国際美術展でその作品を度々観る機会はあったが、 日本で初めての美術館レベルの個展だ。 常設の作品があるという縁もあり、開館10周年記念の展覧会でもある。 鏡などによる視覚的トリックを使った、コンセプチャルというより直感的に分かりやすい作品が楽しめた。

最初の展示室の “Invisible Garden” (2014) は中に造花の草木が植えられた八角形のガゼボ (西洋風東屋)。 窓から覗き込んでいるわけでなく、草木は東屋からはみ出し触れんばかりに手を伸ばせるのに、 向かいから覗き込んでいる人々に自分の姿が見えたりするのだ。 暫く観察すれば中に十字に鏡が立てられていると気付くのだが、簡単な仕組みで一見不思議なイメージを作り出している。 最初のこの展示で、この展覧会にぐっと引き込まれる。

Erlich といえば、平置きした建物の壁面とそれを映す45度に傾いて立てられた鏡を組み合わせ、 横たわる人を壁にぶら下がっているかのように見せる連作インスタレーション作品 “Bâtiment [Building]” が有名で、 国内にも越後妻有に “Tsumari House” (2006) がある [写真]。 今回の展覧会には、“Bâtiment” を写真に撮ったものは出展されていたが、インスタレーションは無し。 その代わり、というわけではないが、ハーフミラーを使って自分の姿をピアノやチェロ、バイオリンの上に演奏しているかのように投影できる作品 “La Répétition” (2014) があった。 特にインストラクションが無くとも、観客はハーフミラーの前で楽器を演奏するかのようなポーズを取り始める。 このような観客に何かを演じるよう自然に促すような所も Erlich の作品の魅力だ。

“La Répétition” のようなわかりやすく大仕掛けで精緻なトリックも面白いが、 水溜りに映る夜景の映像を覗き見る “Sidewalk” のような作品も、観客を自然にしゃがませる所が良いな、と。 常設の “The Swimming Pool” も覗き込む地上の客と見上げる水面下の客が互いに観合う関係になる所も面白い作品なのだが、 5月にしては季節外れの真夏のように暑い日だったので、そういった事よりも、涼しげな日の揺らめきが最も魅力的に感じられた。