金曜の晩は、仕事帰りに本郷へ。『聖なる夜の上映会 vol. 8』 ということで、本郷中央教會でピアノ+フルート生伴奏付きでサイレント映画を観てきました。
後にハリウッドで活躍することになる Robert Siodmak, Edgar G. Ulmer, Billie Wilder らが、ドイツ時代に制作したサイレント映画。 素人俳優5人を使って、ドラマチックな話を抑えて、戦間期モダンなベルリンっ子の日曜の過ごし方を描いています。 『カメラを持った男』 (Дзига Вертов: Человек с киноаппаратом, 1929) に影響受けたと言われる映画で、 もっとドキュメンタリー的で客観的な描写を予想していましたが、 日曜の過ごし方を私的に撮ったホームムービーを観るような可愛らしい映画でした。
街中で声をかけて誘った女の子と、日曜に郊外のニコラス湖に遊びに行くが、結局、彼女が連れてきた親友の方と仲良くなってしまう という話を、遊び友達夫婦 (それも奥さんは喧嘩ふて寝で行かず仕舞い) も交えて描いています。 男女が仲良くなって行く様や嫉妬なども描いていますが、あくまでサラリと、 ベルリン郊外の行楽地ではよくあることの一つかのように描いていました。 なんてモダンで豊かな週末の過ごし方だろう、と、思いましたが。
といっても、カメラワークはカッコ良く、バスやボートの場面も乗り物の上から撮った動きのある映像だし、街中で声をかける場面をロングショットで捉えたり、建物を顔を煽るような極端なアングルから撮ったり。 笑顔をタイポロジカルに次々と映していったり。 これぞ写真における Neue Sachlichkeit の映画版。そういう所も気に入った映画でした。
先日観た『喜びなき街』 (G. W. Pabst: Die freudlose Gasse, 1925) [レビュー] は Neue Sachlichkeit といっても風刺画寄りでしたが、 このような写真寄りの映画もあったと気付かされました。 Neue Sachlichkeit の表現の幅を実感することが出来たという点で、勉強にもなりました。
『聖なる夜の上映会』は毎年12月に開催されている映画の上映会で、今年で8年目。初めて足を運んでみました。 平日の晩ということで、金曜といっても年末。さほどでもないかなと予想していましたが、大入り。 長年続いているだけあって、定着しているのだなあ、と、感心。