神保町シアターの 『伝説の女優 桑野通子と桑野みゆき――母と娘が紡いだ、一瞬の夢』も二週目。 というわけで、この映画を観てきました。
佐分利 信 演じる東京の株屋 重住 高之 と彼を巡る三人の女性の恋の鞘当てを、 高田 浩吉 演じるライバルの大阪の株屋 番頭 京極 連太郎 との仕手戦を交えて描いています。 株取引の細部の描いてはおらず、経済ドラマではなく単なる舞台設定。あくまでメロドラマです。
及川 道子 演じる 仁礼 泰子 はライバルの株屋の令嬢で、引っ込み思案な古風な女性。 番頭である 連太郎との結婚を親に薦められ、高之との仲を反対されます。 高杉 早苗 演じる 池島 忍 は泰子の親友で、重住を支援する大阪の資産家の令嬢。 自ら自動車を運転するくらい行動的なモガだけど、高之への思いを圧して、泰子の縁結びに奔走します。 株の取引に興味もあり、高之が連太郎との仕手戦に破れて破産した後は、父の意向もあって重住家の株屋の権利を買い取って、高之を雇うことになります。 桑野 通子 演じる 梶原 清子 はライバル方の資産家の令嬢で、高之に想いを寄せるも振られて、結局、連太郎と恋仲になり、結婚することになります。
東京と大阪の二都を舞台とした新興ビジネスマン的な資産家をとりまく金と恋のドラマで、三人の女性の恋の鞘当てという点でも、 翌年の『朱と緑』 (松竹大船, 1937) [レビュー] を連想させられました。 これもメロドラマの一類型なのかもしれません。 しかし、三人とも美女とはいえ、役柄にアクが足りず、物足りなく感じました。 奔放なモガという感じの 高杉 早苗 はハマり役で良かったですが、桑野 通子 の役がシャイなのか気が強いのか半端。 佐分利 信 の女性を振り回す朴念仁っぷりもハマり役で、そこは楽しみました。なんでこんな朴念仁がモテモテなのか納得いきませんでしたが。